クマより怖い?ケブカスズメバチにご用心

近年、北海道の都市部などで急増している”ケブカスズメバチ”をみなさんはご存知でしょうか?
ケブカスズメバチはスズメバチの仲間で、攻撃性が高く、毒性の強い針を持つことで知られています。ケブカスズメバチが関与したことによる死亡事故は少なくなく、その数からクマに匹敵する恐ろしさといわれています。

この記事では、北海道に生息するケブカスズメバチや、国内に広く分布するスズメバチについて紹介するとともに都市部にスズメバチが増えている理由や刺されたときの対処法、刺されないよう私たちにできることなどをご紹介します。

目次

スズメバチとは?

それでは、はじめにスズメバチの形態や生態についてお伝えします。

日本に生息するハチは約4000種にものぼるといわれ、その中で約17種のスズメバチがいることが確認されています。種類にもよりますがスズメバチの体長は約1.5〜2センチとハチの中ではかなり大きめです。
一般的にスズメバチは攻撃性が強いことで知られており、巣に近づくだけで襲いかかってくることがあります。強い毒針を持ち、何度も刺すことが可能です。

花の花粉や蜜をエサとするミツバチとは違い、スズメバチは昆虫なども食べる肉食です。球体の巣をつくり、女王バチを中心とした社会を形成します。
またスズメバチは寒さに弱く、女王バチを除くほとんどのスズメバチは冬を越せません。働きバチで約1ヶ月、女王バチで1年ほどの寿命とされています。

とくに春から秋にかけて活発的になり、巣も大きくなります。スズメバチは日本国内のほとんどの地域に分布しており、民家の庭や家の軒下など、さまざまな場所に巣をつくります。

クマより恐れられている?ケブカスズメバチとは? 

北海道で恐れられている動物にヒグマがいるように、今、昆虫でもっとも恐れられているのが”ケブカスズメバチ”です。ケブカスズメバチによる被害は増加しており、毎年のように死亡事故が発生しています。死亡件数でみるとスズメバチよりも危険といえます。

平地から山地まで幅広く生息しているケブカスズメバチは、その名の通り、からだに密集した毛が生えています。スズメバチの仲間でも中型で、女王バチの体長は約2.5〜3センチ。働きバチは2〜2.5センチほどです。
ケブカスズメバチは全体的に黄色く、スズメバチと比べてみてもその違いがはっきりわかります。

スズメバチ
ケブカスズメバチ

ちなみに本州に生息しているキイロスズメバチは本種の亜種です。ケブカスズメバチは攻撃性や威嚇性が非常に強いので3〜12月の活動期間はとくに注意しましょう。

またケブカスズメバチの特徴として、都市部に多く巣をつくることが知られています。軒下や屋根裏、看板の裏や、ごみ箱の中など身近なところに巣をつくります。

ケブカスズメバチとスズメバチの違いをまとめると

  • 都市部に巣をつくることが多い
  • 果実や昆虫などを食べる雑食性
  • 警戒心が強く、攻撃的
  • 行動範囲が広い
  • 3月~12月と活動期間が長い

とくにケブカスズメバチは都市部や近郊の環境に適応して巣をつくるため、ほかのスズメバチ(とくにオオスズメバチ)とは違い、人との接触率は高くなります。じっさいに刺傷件数は多く、近年北海道で話題にあがっているほとんどのものが、このケブカスズメバチによるものです。

さらにケブカスズメバチの巣は大きく、短期間で形成され、働きバチの数は1000匹を超えることもあります。通常のハチにくらべて攻撃性が高いため、自身で駆除するのは非常に危険です。ケブカスズメバチの巣を見つけた場合はなるべく早く業者に依頼することをおすすめします。

ケブカスズメバチの飛行は通常時でも30キロとスピードは速く、空中を飛翔している昆虫を狩ることができます。中でもハエ目の昆虫を好んで食べますが、もちろん他の昆虫も捕食します。ミツバチの巣を狙い、幼虫を捕食したり、またミツバチ自身を空中で待ちかまえて食べてしまうこともあります。

北海道の都市部にケブカスズメバチが急増しているワケ

近年、都市部におけるケブカスズメバチの増加はメディアでも報告されている通り、右肩上がりです。けれど、どうしてケブカスズメバチは都市部に増えているのでしょうか?考えられる理由はいくつかあります。

気候変動

北海道にケブカスズメバチを含むスズメバチが増加している理由のひとつに、気候変動があげられます。近年の温暖化によって北海道の冬は以前より暖かい傾向にあります。これによって冬を越すスズメバチが増え、結果的に個体数を増加させている可能性があります。

環境の変化

さらに近年は環境破壊による山里の減少が著しいです。これによってスズメバチのエサが不足していることが指摘されています。

エサが不足すると、スズメバチは人里におりて果実や人間の出すゴミなどで賄おうとします。そのため都市部の環境に適応したスズメバチは山里ではなく、街中で巣をつくることが多くなっています。

天敵の減少

ケブカスズメバチの天敵である昆虫や鳥類、哺乳類の減少がスズメバチの個体数を増やしている要因のひとつとされています。

たとえば、ケブカスズメバチの天敵として知られているオオカマキリ(強靭なあごを持つ)やオニヤンマ(時速70キロのスピードで飛行)、カブトムシ(針を通さない甲冑を持つ)などは環境の変化や影響を受けやすいとされており、その個体数は減少傾向にあります。

また、ケブカスズメバチの天敵であるオオスズメバチは都市部では減少しています。これはオオスズメバチが都市部の環境よりも、より自然の環境に適しているため、わざわざ都市部に巣をつくらないことなどがあげられます。
こうした天敵の減少からも、ケブカスズメバチは数を増やしているといえます。

ちなみに同じ北海道に生息しているヒグマもスズメバチのれっきとした天敵です。
かれらはスズメバチ単体ではなく、巣ごと捕食します。

クマの毛は硬く、皮膚も分厚いため、スズメバチの針が届くことはありません。さらにスズメバチの毒が効かないため、もはやすべてのスズメバチにとって脅威の存在といえるでしょう。そんなクマも安易に都市部に姿をあらわせないので、都市部に巣をつくったスズメバチはクマという最大の天敵から逃れられる絶好の地を手にいれたことになります。

なぜ人を刺すのか? スズメバチに刺されたときの正しい対処法

そもそも、どうしてスズメバチは人を襲うのでしょうか? 本章ではスズメバチが人を刺す理由と、スズメバチに刺されないようにするための予防策、さらにスズメバチに刺されてしまった場合の正しい対処法についてお伝えします。

なぜ人を刺すのか?

スズメバチが人を刺す理由のほとんどが、ハチの巣を守ろうとする防衛反応からきています。スズメバチにとって巣は女王バチや幼虫がいる重要な場所です。そのため、ハチの巣に人間が近づくと外敵とみなして攻撃的になることがあります。

スズメバチの針

スズメバチの針は産卵管に通じる器官で、毒嚢(どくのう)という袋につながっています。針の内部には毒液を注入するための管があり、刺すと毒液が出る仕組みになっています。

このようにスズメバチの毒針は産卵管と一体になっているため、オスは針を持ちません。またスズメバチの針はミツバチなどと異なり、何度も刺すことが可能です。

スズメバチの毒にはセロトニンなどアレルギーを引き起こす成分が含まれており、これによってアナフィラキシーショック(数分〜数時間の即時型アレルギー反応)を起こす危険性があります。

また、アナフィラキシーショックを引き起こさない場合でも痛みや腫れ、発赤といった症状を伴います。

もし刺されてしまったら?

万が一スズメバチに刺されてしまった場合の正しい対処法についてお伝えします。

スズメバチに刺されてしまったら、慌てず、落ち着いて行動するようにしましょう。これはほかのハチを刺激しないためでもあります。しずかにその場を離れたあとは以下の手順で応急処置をしてください。

  1. 傷口を水で洗い流す
    毒液は水に溶けやすい性質を持っています。刺された箇所を流水で血がにじむまで洗い流します。
  2. 毒をしぼり出す
    ハチに刺された箇所をつまんで毒をしぼり出します。また、針が刺さっている場合は取り除くようにしてください。
  3. 患部を冷やす
    氷やそれに代用できる冷たいもので患部を冷やします。

※水がない場合は傷口から毒をしぼり出して、できるだけ患部を冷やすようにします。

あくまでも対処方法ですので、刺されてしまったらできるだけ病院に急ぎましょう。
スズメバチに刺されてから30分以内にめまいや吐き気といった全身症状があらわれた場合はすぐに病院へ向ってください。アナフィラキシーショックは危険性が高く、最悪の場合は死に至ることもあります。
過去にスズメバチに刺されたという方はとくに注意が必要です。

また医療機関を受診する際は、次のことを伝えられるとスムーズに診察ができます。

  • 刺された日時や場所
  • 刺されたハチの種類
    スズメバチにも複数の種類がいます。見た目や大きさなどのわかる範囲で伝えましょう
  • 過去にハチに刺されたことがあるかどうか
  • アレルギー体質かどうか
    これまでに経験したアレルギーなど

刺されないために注意すること

日本で確認されているスズメバチは約17種類います。そのうちの約14種類が北海道に生息しているといわれています。上記でも述べた通り、いずれもスズメバチはみずからの巣を守るための防衛反応が非常に高いハチです。

まず、ハチの巣を見かけても近寄らないようにしてください
まわりに飛んできたハチを叩いたり、潰そうとしたり、大声をあげたりするとハチは危険だと判断して人を攻撃することがあります。

スズメバチは香水や整髪料の匂いなどにも敏感です。最近では柔軟剤が持つ強い匂いにも反応を示すといわれています。さらに、黒い服に反応しやすいといわれています。そのため、黒い服を着てハチの巣の近くで作業をおこなったりすると攻撃されるリスクが高まり危険です。

スズメバチに刺されないために私たちにできること

  • 黒い服を着るのを避ける
  • 強い香りのするものを身につけない
  • 大声を出したり、駆けたりしない

万が一、スズメバチに出くわしたらゆっくり音を立てずに後ずさるようにして、その場から離れましょう。スズメバチの巣は秋に大きくなるのでより警戒が必要です。駆除をする場合は業者などプロに依頼し、むやみに手を出さないことが重要です。

さいごに

スズメバチや北海道に生息するケブカスズメバチについてご紹介してきました。おそらく本記事に目を通してくださったほとんどの方が「スズメバチは人間の敵だ」と認識していることと思います。
しかし事実は少し違います。スズメバチはあるシーンでは害虫扱いですが、同時にまたある場面では益虫でもあるのです。

たとえば、スズメバチは農作物や樹木につく害虫を幼虫のエサとして食べます。そのため害虫で悩まされている農家さんにとっては非常にありがたい有益な虫でもあり、花から花へと移動するときに受粉を仲介してくれることでも知られています。

たしかにスズメバチはときに凶暴な一面を示して私たち人間に恐怖を与えますが、いうまでもなく、スズメバチのほうでも人間を怖がっています。ですのでスズメバチを(または巣を)見かけたら安易に近づこうとしないことが事故を防ぐ一番の方法といえるでしょう。

かれらとうまく共存していくために”私たちになにができるのか”、いま一度考えてみたいところですね。

※画像はイメージです。

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