【最北の観光列車】急行花たびそうや稚内行きの旅

日本最北の鉄道路線、宗谷本線の出発地はここ旭川駅です。

朝でも気温は20℃ほどで、日が当たると普通に暑く、そこまで北の大地感はありません。しかし、これから向かう道のりの途中には、最果ての景色が広がっているはず。

今回ご紹介するのは、宗谷本線で運行される季節限定の観光列車『花たびそうや』号です。

2020年に運行開始予定でしたが、新型コロナウイルスの影響を受けて2年延期。昨年より運行を始めて好評により2023年も再び運行しています。

「ようこそ春の道北へ」、5月になってようやく春が訪れる道北。厳しい冬の先には一体どんな景色が待っているのでしょうか。

3番線ホームに急行花たびそうやが入線しました。
この列車はJRの定期列車では存在しない、「急行列車」での運転です。これが鉄道ファン的には結構ポイントだったりします。

昨年も運行されてPass-caseブログでご紹介しましたが、今年は4両編成での運転。
全車指定席ながら、真ん中の1両とロングシートがフリースペースになっており、窓側を取れなかったとしても十分景色を楽しめます。

10:41 旭川駅 発

JR社員さん含め多くの方にお見送りされまして、旭川駅を出発です。
パステルチックなこの横断幕も、涼しさを感じさせてくれて良いですね。

『アルプスの牧場』のオルゴールチャイムから始まる、車掌さんの肉声放送が流れまして、右手には網走へ向かう石北本線が分かれていきました。

旭川周辺の列車が集まる、旭川運転所の横を通過します。

大量に停まっていたのが、富良野線で活躍していたラベンダー色のキハ150形気動車たち。
2023年春より新しいハイブリッド気動車H100形気動車が投入されています。

旭川市におけるもう一つの中心部、永山駅で運転停車しました。
ここでは駅員さんがホワイトボードにて、花たびそうやをお見送りしてくださいます。

白い雲にやや隠されていますが、右手には大雪山が見えてきました。
標高2290mの旭岳は道内最高峰。北海道中心部に位置しており、23万haの大雪山国立公園は、日本最大の国立公園です。

車内に目をやると、吊り広告には花の写真が飾られていました。

他にも沿線市町村について紹介してくださったりと、車窓に限らず楽しみが尽きません。

最初の停車駅は比布駅、10分間停車します。
ここには樹木希林さんがピップエレキバンのCM撮影にいらっしゃって、その顔出しパネルが置かれていました。

駅舎内には売店を備えた『ピピカフェ』があって、名産のイチゴを中心とした販売を行っています。

窓は開いても冷房が無くてちょっと暑い車内、いちごアイスを買ってきました。
去年乗った時も買っちゃいましたが、甘酸っぱさだけでなく瑞々しさも感じられる、オススメのアイスです。

反対方向の列車が到着すると、お見送りされつつ比布駅を発車します。

上川盆地を走っていましたが、宗谷本線の中でも険しい塩狩峠を越えます。

ここでは1909年に汽車の連結機が外れ、客車が暴走しそうになる鉄道事故が起きました。鉄道職員の長野正雄さんが手動ブレーキで停止させようとするも止まらず、自らの体によって客車を止めて乗客を救ったという話が伝えられています。

まもなく塩狩駅に到着、窓からは4両編成のキハ40たちが連なっている姿を見られ、「急行」の名に相応しい姿を見せてくれました。

その頂上付近にある塩狩駅では、10分の停車時間があります。
構内踏切で各ホームが結ばれているため、その全体像を写真に収める撮影タイムに。

もうその時期からは外れてしまいましたが、駅周辺にはエゾヤマザクラが咲き誇ります。

いただいたポケットティッシュには、華やかな塩狩駅の姿が差し込まれていました。

塩狩駅は年400万円の維持費を和寒町が負担して残されています。
ふるさと納税によって2年ほどで約1400万円集まっており、秘境駅として知られるだけでなく、塩狩峠関連の歴史から非常に人気なのです。

塩狩駅を出発、駅の近くには塩狩峠記念館もあって、ぜひそういったところで宗谷本線の歴史もじっくり学びたいなと思います。

塩狩峠で起きた鉄道事故については、三浦綾子の小説『塩狩峠』で取り上げられています。
1968年に発表されており、車内ではその時代の宗谷本線について案内されていました。

塩狩駅もある和寒町の中心駅、和寒駅に到着。ここでは6分ほどの停車です。

1988年に建て替えられた駅舎内には、宗谷本線を走った機関車の様子が展示されていました。

和寒町から剣淵町に入りまして、剣淵川を渡ります。

剣淵駅では5分間の停車、アルパカのゆるキャラ「ぷっちーな」がお出迎えしてくれました。

剣淵町は絵本の町としてまちづくりを行っており、絵本の館という施設も見どころの一つだそう。子どもたちでも楽しめるリラックスした空間が広がります。

士別〜剣淵には防雪林、深川林地が続きます。

このあたりは泥炭地で植林に苦労したのですが、深川冬至氏によって泥炭の分解を促進する土壌改良法が取り入れられ、ドイツトウヒを採用して造成が成功しました。

サムライの「しべつ」、士別駅に到着です。

士別市には「羊と雲の丘 羊のテーマファーム」という観光牧場があって、サフォーク種の羊がモチーフの「さほっちファミリー」というゆるキャラがいます。

跨線橋には「歓迎 花たびそうや」が掲げられまして、正面から迎えてくれます。

鉄道色の濃いネタになってしまいますが、ホーム上には北剣淵駅、下士別駅の駅名板が展示されていました。2021年春に廃止された駅で、鉄道ファン的にはこういうのにホイホイ集まってしまいます。

ホーム上では士別市の特産品が販売されていました。
羊関連の言葉に掛けたお土産品のほか、天サイダーなる商品も。

サムライ士別と言いましたが、これは根室中標津空港がある「標津」と区別してのもの。
それにちなんでお侍さんもお見送りしてくださいました。

窓が開くとはいえエアコンが無くて暑いため、天サイダーを購入。
ラムネ風味へリニューアルしたとのことで、ラベルも新しくなっていました。
士別市の代表的作物「甜菜」から生まれた砂糖ビートオリゴによって爽やかな味わいです。

間も無く名寄駅に到着、ここで右手に注目しますと、SL排雪列車キマロキ編成を見られます。
機関車、マックレー車、ロータリー車、機関車の4つが編成を組み、マックレー車が両脇の雪壁を崩してかき集め、ロータリー車が遠くへ雪を飛ばすという役割をしていました。

名寄駅は宗谷本線の中でも主要な境界駅、旭川〜名寄と名寄〜稚内では大きく輸送量が異なります。

名寄駅では10分間の停車。この間に見ておきたいのが、花たびそうやの発車標です。
利尻山をバックに桜が散りばめられ、その魅力を詰め込んだデザインです。

一方で、鉄道ファン的にはシンプルに『急行』と書かれている方が、好みかもしれません。

観光列車でもなんでもなく、ただの急行ですよっていうのが、単色で素っ気なく現れていると、タイムスリップした感覚になります。

名寄市は旭川以北における中心都市、日本一のもち米生産地としても知られます。名寄市立大学やイオン名寄店など、この時点で日本最北の〇〇が現れたり。

4両連ねたキハ40形たち、いよいよ宗谷北線と呼ばれる名寄〜稚内の区間に入ります。

12:36、名寄駅を出発。
市街地からだいぶ様子が変わりまして、自然いっぱいの景色に変貌します。

美深駅に到着すると、駅舎上にある「美幸の鐘」が奏でられていました。
美深駅から分岐した日本一の赤字路線とされる国鉄美幸線を忘れず、“美しく幸多い”町であり続ける願いを込められています。
さらに、その美幸線の列車出発を再現した放送も流れていました。北海道が好きな鉄道ファンなら大興奮間違いなしです。

9分間の停車中には、ホーム上で特産品販売が行われます。

かぼちゃのシフォンケーキを買ってきました。
まるでリンゴのような甘さとなっており、是非ともオススメしたいです。

美深駅を出発しますと、列車は天塩川に沿って北上します。

2021年春のダイヤ改正で駅から降格した、豊清水信号場で普通列車と行き違います。

宗谷本線の中間地点と言える、音威子府駅に到着しました。北海道で一番小さな村とされ、2018年の人口は770人です。

ここでの停車時間は5分程度、それでもゆるキャラの『おとっきー』がきてくれました。体はアカエゾマツで、村の豊かな森林をイメージさせています。

しばらく並行して流れる天塩川は国内4番目の長さを誇り、北海道遺産にも認定されておりイトウが生息します。

だんだんと速度が落ちてきたこの辺りには、北海道命名の地があります。地元の方が旗を振ってお見送りしてくださいました。

1857年幕末の探検家松浦武四郎は、天塩川の河口から上流に登って士別まで流域の調査を行っていました。

その帰路において、ここ頓別坊のコタンに住む長老に「カイナー」の意味を尋ね、それを元に『北加伊道』という名が生み出されています。

対岸には国道40号が走っており、そこから森へ出てきた撮り鉄さんがいらっしゃいました。
こんな山中まで歩いてくるとは、本当にすごいなと思わされます。

中川町に入りまして、まもなく中心駅の天塩中川駅に到着です。

ここでは29分の停車時間がありまして、特産品販売が行われます。

旧駅舎をモデルに新しく建て替えられた駅舎、『花たびマルシェ』と称しまして、駅舎内のカフェやホーム上の販売を楽しめます。

事前予約が基本となりますが、ご当地弁当の販売も。

野菜パエリア弁当や、スタミナステーキ丼など、長時間乗車においてボリュームあるお弁当が取り揃えられているようです。

さらに屋外の焚火ブースでは、中川町の薪を使ってウインナーとベーコンを販売していました。

脂が乗った豚のジューシーさを引き出しており、お祭り屋台で食べる楽しみも味わうことができます。

駅舎内の『オトカフェ』さんでは、スモークサーモンピザトーストと、はちみつレモンサイダーを。
シロップの濃厚な味わいに、オリーブ香るピザが引き立ちます。

駅には地元の方がたくさん集まっており、本当にお祭り状態です。観光列車がやってくることで、鉄道を身近な存在に感じていただけたらと思います。

長時間の停車を終えまして、天塩中川駅を発車しました。

中川町から幌延町に入ったところで、宗谷本線の中でも人気の秘境駅が姿を表します。
板張りホームにヨド物置が乗っかった糠南駅です。

速度を落として走ってくださり、草原の中にポツンと立地する駅は、小さいながらも存在感があります。

見どころは続きまして、天塩川の山沿いにかけられた問平陸橋へ。

川の上までせり出しているような感覚で、雪解けの穏やかな流れを間近に観察できます。

唯一のトンネルである下平トンネルを抜けまして、雄信内駅を通過します。
ゴーストタウンの駅としても知られており、立派な木造駅舎が残っていながら秘境駅です。

幌延町は秘境駅を町おこしとして活用しており、町の予算によって維持されている駅がいくつかあります。
中には最近の廃駅も存在しますが、ボロボロの貨車が人気の安牛駅は線路から離れたところで保存されています。

次の上幌延駅についても同様に、貨車駅舎が残されています。
駅名標も独自デザインのものが立てられました。

ここで左手奥の方には、利尻富士が見え始めました。今日はかなり天気が良く、この先の眺望も期待できそうです。

特急も停まる幌延駅にて5分間の停車です。

幌延町はトナカイ観光牧場があり、わざわざ駅まで来てくれました。

幌延町とトナカイの関わりは、岐阜県出身の脱サラした方がフィンランドでトナカイの飼育実習をし、道内の飼育敵地として幌延町内の有志と会社を設立して、輸入したのが始まりです。

当時は家畜として飼育、1995年に観光客の期待に応えようと幌延町が50頭を購入しました。
飼育が大規模になって市街地では手狭に、現在のトナカイ観光牧場へ移転しています。
クリスマスの可愛いイメージから食べるのが可哀想という印象を持たれているようですが、豚肉と同じような味わいだそうです。

幌延駅の札式の乗り場案内にも、花たびそうやが用意されています。
去年も掛かっていたのですが、おそらくブルーポピーの花が増えていました。

幌延町を出発しまして、奥の方には風力発電所が見え始めました。宗谷地方の海沿いは風が強いため、かなり適していそうです。

酪農地を走っていますと、遠くの利尻富士もはっきりと眺められました。

豊富駅で10分間の停車。駅舎から離れた2番線ホームへの到着です。

豊富町には日本最北の温泉郷、豊富温泉があります。

ずっと来たいと思っていながら、また1年経ってしまいました。
石油由来の独特な香りがする温泉、ぜひとも入りに行きたいです。

宗谷本線沿線には、風雪から線路を守る防雪林が続きます。そのため利尻富士が木に隠されることも多く、なかなか目が離せません。

兜の形をしていることからの兜沼が目の前、兜沼駅を通過しました。

最北の自治体である稚内市に入りまして、利尻富士の残雪による細かい模様もはっきり観察できます。

古くからの木造駅舎が残り人気の抜海駅を通過。

稚内市が維持管理費を負担しており、2023年春に廃止されるのではと言われていましたが、多くの反対意見が寄せられて1年間は存続が決まりました。

ここまで原野を走っていた宗谷本線ですが、ここで海が眺められるところへ向かいます。線内でもトップクラスのビュースポットです。

海の向こうに浮かぶのは利尻富士、さらに今日は運の良いことに礼文島まで見られました。
天気が良く霧も晴れていないといけない、かなり絞られた条件をクリアした貴重な景色です。

止まりそうなくらい減速して2島の景色をじっくり見せてくださりました。
花たびそうやに限らず、ここに乗ったら是非とも注目していただきたい区間です。

稚内市こまどりスキー場が見えてきましたが、市街地はもうすぐそこです。

まずは南稚内駅に到着。

ロードサイド店舗が立ち並ぶ中心街が近く、地元の方はこちらの方を利用されるようです。

駅員さんも一緒に最後のひと区間、お見送りしてくださいました。

高架線を登って港町を眺められる区間、アルプスの牧場のオルゴールで始まる終点の放送が流れます。

16:43、終点の稚内駅に到着です。

正直忘れかけていましたが、ここが日本最北端の駅になります。

6時間2分の観光列車の旅に幕を下ろし、ここでのお出迎えも大賑わいでした。

映画館まで併設したキタカラには展望台があって、ここから4両編成のキハ40を見下ろせました。
これだけ長い編成は特急列車くらい、そもそもキハ40が来るのも珍しいです。

これ以上伸びていない鉄路、北の果てまでやってきました。

昨年に続いてまた乗りにきてしまう、人の温かみを感じられる魅力的な観光列車です。全車指定席ながら当日でも空くことが多いので、是非いらっしゃってみてください

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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