三笠で発見された化石「エゾミカサリュウ」と顛末

北海道に棲むあらゆる生きものをいろいろな角度からお伝えしておりますが、今回はちょっと趣を変えて「恐竜」です。

なぜかと言えば、北海道の各地では沢山のめずらしい化石が発見され、なかでも目についたのが1976年に発見された「エゾミカサリュウ」の化石。
それによって巻き起こった予想もしない騒動の顛末と「エゾミカサリュウ」の正体、じっくり解説していきます。

目次

エゾミカサリュウのとは?

まず「エゾミカサリュウ」がなんなのか、結論からすると。エゾミカサリュウは白亜紀後期に生息していたとされる「有鱗目 – モササウルス科 – タニファサウルス属」に部類される爬虫類の仲間です。
タニファサウルスはニュージーランドと、南極そして日本で発見された海トカゲの一種です。今から約8500万年前に生息していたとされ、体長は6メートルほどと推定されています。

北海道でタニファサウルス(エゾミカサリュウ)の化石が発見されたことにより、タニファサウルスは南極圏から日本の北海道まで広く生息していたことが判明しました。
生息域を拡大していった種であるという事実を示すのに貴重な発見だったといえるでしょう。

そこでとつぜんですが、皆さまは「エゾミカサリュウ」の化石をご覧になられたことはありますでしょうか?

いかがでしょう?
発見されたのは一部分なのですが、一見、恐竜界の王者「ティラノサウルス」の頭部に見えませんか?
1976年当時、これが三笠を巻き込んだ騒動の発端となっていくのでした。

恐竜ブームだった当時

1960年代、国立科学博物館で一般公開された「アロサウルス」の復元模型が火付け役となり、国内ではにわかに恐竜ブームが巻き起こります。

戦前は「日本には恐竜なんていなかった」という認識があたり前。ゆいいつ見つかっていたのは「ニッポノサウルス」という草食恐竜のみでしたが、1968年に「フタバスズキリュウ」という恐竜の化石が発見され、以降、さらに恐竜への関心が高まります。

1970年代には新宿小田急デパートからはじまり、各地のデパートなどを巡る催事「地球展」で公開され、日本中の話題となりました。ちなみにこの「フタバスズキリュウ」、ブームに影響を受けた藤子不二雄(藤子・F・不二雄)氏により、1980年に映画『ドラえもん のび太の恐竜』の”ピー助”のモデルとして登場します。

恐竜の人気は子供たちだけにとどまることなく、大人たちの心もワクワクさせるものとなりました。

エゾミカサリュウの発見で湧き立つ三笠

ブーム真っ只中の1976年年6月。北海道の三笠市である化石が発見されました。
見つかったのは頭部、長さ約30センチ、高さ約22センチ、幅約18センチ。左目らしき痕と左右17本の歯らしきものが見受けられます。それらから推測するに、体長約7メートル、体高3メートルほどの中型恐竜で、中世白亜紀後期のティラノサウルス科に属する新種の恐竜の可能性があると推定。
日本国内ではじめて肉食恐竜の化石が発見されたと当時、北海道のみならず日本中が湧きあがりました。

「エゾミカサリュウ」と名付けられ、観光資源として三笠市内は色めき立ちます。

今ではもうありませんが、再現した桂沢湖畔の高さ7メートルを誇る恐竜像(足元の案内版にはティラノサウルス像になっていますが)は、エゾミカサリュウを復元した模型として多くのひとの関心を惹きました。ほかにも三笠市内各地にエゾミカサリュウをモチーフにしたキャラクター”リュウちゃん”が描かれた看板が設置されるなど、ひときわ湧き立ちます。

夏には恐竜まつりを開催され、三笠市は日本でもっとも恐竜にアツい街でした。

人気番組「恐竜探険隊ボーンフリー」にも登場

発見された翌年の1977年、当時、放映されていた子供向けの人気番組『恐竜探検隊ボーンフリー』に登場し、ますますエゾミカサリュウの知名度は広がっていったのでした。

「恐竜探険隊ボーンフリー」とはどんな作品かといえば、恐竜ブームに目をつけた、「ウルトラマン」で有名な円谷プロ(円谷プロダクション)が製作した「円谷恐竜三部作」の最初の作品です。
ストーリーは、彗星の接近で起きた地殻変動によって地球内部の空洞が隆起し、そこは中生代の環境が維持され恐竜たちも生息していた。

ここまで話すと人類の存続の為に恐竜たちを退治する話なのか?と思うでしょうが違います。
現代の環境に対応しきれない恐竜、密猟者、共存反対派から、恐竜を保護する”異色”のヒーロー達。
さらには、着ぐるみ特撮ではなく、セット、メカを模型を使った実写、恐竜はコマ撮り、登場人物はアニメという異色の作品なのです。
ちなみにですが、作中でエゾミカサリュウは桂沢湖のエゾミカサリュウのような姿で描かれ、現れたのも夕張の炭鉱だったような覚えがあります。

驚愕の事実にリュウちゃん開口・・・凍りつく三笠市

1977年に国の天然記念物に指定され1979年に三笠市立博物館にてエゾミカサリュウの化石展示が開始されます。1989年のある夜。報道番組で耳を疑う事実が判明します。

番組内で「エゾミカサリュウは海トカゲの仲間」と報じられ、1989年3月14日の北海道新聞では、恐竜、実は『トカゲ』、鑑定ミスが判断、シンボル『リュウちゃん』困ったナのような記事が掲載されました。

この指摘を受けた三笠市立博物館は2008年、海の爬虫類モササウルスの新種「タニファサウルス・ミカサエンシス」だとあらためて発表します。
てっきりティラノサウルスの新種であると信じ切っていた三笠市民の方々は、かなりの衝撃を受けたのではないでしょうか。

しかし、先ほどご覧いただいた化石(頭部)を見てもわかる通り、ティラノサウルスと間違えてしまうのも無理はないのではないかと思います。

近隣、芦別市でも発掘!?

さらに2016年には、三笠市のとなり街「芦別市」でも恐竜と思われる化石が発掘されました。こちらの化石は2018年に北海道大学の研究チームによりティラノサウルス類の尻尾(尾椎骨の一部)と判明。北海道で初、日本国内でも希少なティラノサウルス類(肉食恐竜)の化石だと証明されます。

現在は、エゾミカサリュウと共に三笠博物館に展示されています。どうやら三笠市周辺の地域にはたしかに恐竜が存在していたようです。

幻で終わった恐竜

残念ながらエゾミカサリュウはティラノサウルスの新種ではなかったわけですが、そもそも化石を正確に分析・判断するのって非常にむずかしいんですよね。
今でも謎に満ちた化石がたくさんあるのは、そのためでしょう。

考古学的には重要な発見であるのは間違いありません。それに、タニファサウルス・ミカサエンシス(エゾミカサリュウ)・・・かっこよくないですか?
姿はどちらかというと恐竜を彷彿させますし、なにより現在は「Taniwhasaurs mikasaensis」という立派な学名がついているのです。

三笠市は世界的にみてアンモナイトの化石が多く発掘されており、アンモナイトの宝庫といわれている事もあり、改めてエゾミカサリュウや太古のロマンを感じる為に、三笠市立博物館に訪れてみてはいかがでしょう?

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