濃昼のトンネルで体験した不思議な話

北海道石狩浜益地区に濃昼(ごきびる)という地区があります。日本海を望む海岸線から内陸に入った山深い所で地名マニアの間では良く知られた場所です。
かの昔、伊能忠敬や松浦武四郎が訪れ調査等をした場所であり、非常に有名な山道もあり、トレイルランニングを楽しむ愛好家で賑わっています。
しかし鰊漁で栄えた町は寂れていて、国道のトンネルも新しいものが海岸側のに出来ましたが、古い旧送毛トンネルは今も残っています。

これは私の兄が大学生の時に経験した体験談です。私も色々オカルトの話を聞きますが、初めて聞いた時に久々に鳥肌が立ちました。

学生時代、兄はキャンパーで日本中を自転車にテントを載せ一人旅をしていました。一時期本当に冒険家を目指していて一日100キロ以上を普通に走ります。

当時、北海道半周の旅に出掛け、国道231号から浜風を受け陽気に自転車を走らせていたそうです。
空気が変わったのは送毛トンネルの手前辺りの古いトンネルを通った時で、何か後ろから追われている気がしたそうです。
他のチャリダーだと思い後ろを見ると誰も居なく、車さえ走っていませんでした。その時は特に気にせず、大型車に気をつけようとトンネルに入りました。

その古いトンネルは歩道がほぼ無く、非常に脆さを感じ暗い雰囲気があります。
彼は慎重にハンドルを操作していましたが、中で再び誰かが追ってくる気配がします。

自転車以外でバイクや車であれば音で解りますし、誰も居ない道を追ってくる者がいるばずはありません。
兄はその時、直感的に人間ではない感覚がしたそうです。

濃屋・・・彼がこの辺りの内陸地に古くからの集落があったな・・・と考えた瞬間でした。
「うあ!」ものすごいスピードで後ろの何かが追い付き、彼の背中を叩きつけてきたそうです。

トンネル内で転倒し右腕を負傷しました。痛みが酷く、しかし逃げなければならないと思いました。
車も人も獣も居ないトンネルを全速力で抜けると、やっと気配は去りました。

石狩に入った時から、どこからか何かは憑いて来ていたはずです。
それが姿を表したのは歴史ある濃昼を想った瞬間でした・・・何かを訴えたかったのでしょうか。

それから数年後、彼が不思議な体験をした場からすぐ北の送毛トンネルで死亡、負傷者数十人が出た凄惨な交通事故が起きました。
兄はその出来事以来トンネルに異常に注意し旅を続け、交通事故に合わず社会人となり、まだ旅を続けています。

そして歴史ある場では謙虚な姿勢で旅をする様にしているそうです。