なれなりに昔、離島巡りで礼文島に行った時のエピソードです。
日本の北限は稚内市にありますが、個人的には礼文島こそが最果ての地というイメージです。
北海道の北限に
「ううっ、さぶい・・・」
3月とはいえさすがは北海道、極寒の夜である。
冷たい風がピューピューふいてくるし、バスがもうないから歩いて戻るしかないのだ。
というのも、今日はこんなアクシデントがあった。
稚内からフェリーで4時間半、遂に北海道の北限ともいうべき礼文島に到着した。
地理上の北限は稚内市なのだが、私の感覚では「礼文島こそが最果ての地」なのだ。
その「最果ての地」を制覇してやろう、とかねてより目論んでいたのだが、そのチャンスがついにやってきたことから勇んで礼文島にやってきた。
香深にあるフェリー乗り場に到着し、まずはレンタカーを探した。
「3月は閑散期だから、大丈夫だよね?」と、半ば期待しながら。
が、しかし、レンタカーはすべて出払っていて借りられなかった
「むぅ、仕方ない、公共交通機関で行くか・・・」
私は「礼文島の北限」を目指してバスに乗った。
目標は「礼文空港」である。
地図を見る限り、礼文空港の周辺には宿泊施設らしきものが見当たらなかったが、その日のうちに香深に戻ってくれば宿泊施設の心配はないだろう。
そう踏んだ。
思いがけないトラブル
で、その途中、思いがけないことに気づいた。
「あれ、小銭がない」
財布の中をよく見ると、小銭をほとんど使い切ってしまっていて、残金は「1万円札ただ1枚」となっていた。
「ありゃあ」
しょうがないので、バスの運転手に1万円札の両替えをしたいと問い合わせたところ、
「すいません、1万円札の両替ができないんですよ」
「・・・そうですか・・・」
確かにバスの中はガラガラで、とても1000円札が10枚以上ストックされている様には思えなかった。
仕方がないので、一旦途中下車して香深に戻ることにした。
「あのう、ここで降りたいんですが、このお金で足りますか?」
と、残った小銭を広げて見せた。
「えっと、ここまでで340円ですから、大丈夫ですよ。」
「よかった・・」
私は残り少ない小銭を払ってバスを降り、香深に戻るバスを待つことにした・・が。
またもトラブル
「今日はもう来ない?」
停留所の時刻表を見ると、どうやら終バスは終わってしまった様である。
「・・しゃあない、歩いて戻るか・・」
と、もと来た道を歩いて戻ることにしたのだが、それがいけなかった。
3月なので道路の雪はほぼ解けており、歩くのには不自由がなかったのだが、途中から雪が降りだした。
徐々に足場が悪くなってきて、なかなか歩みが進まない。
バスを降りたのは島のちょうど真ん中くらいで、島の半分を歩くことになったわけだが、想像以上の道のりだった。
いつの間にか日は落ちて、夜になってしまった。
「真っ暗じゃん!!」
道端に街灯がポツン、ポツンと点いているだけで、あたりは真っ暗。
「熊でも出てきたらひとたまりもないんじゃないか!?」
だんだんと不安が込み上げてきた。
「これは一刻も早く香深に戻るに限る」
とはいえ、周りには民家らしい民家もない。
まだ着かないのかな
「まだ着かないのかな」
3時間くらい歩いただろうか、精も根も尽きかけていたその時、前方に明かりが見えた。
「・・・やっと香深だ・・・」
と思ってホッとしたのも束の間、それはパチンコ店の灯りだった。
「でも、生き返った」
体がすっかり冷え切っていた。
そのため、暫くここで時間を潰すことにした。
「パチンコ屋さんには両替機があるんだよね」
今更感満載だが、両替機の存在が愛おしく感じられた。
一時間くらい遊んだだろうか、パチンコ店から香深に向けて再出発した。
その後、2時間くらい歩いて漸く香深に到着した。
寒かった
「・・・ふぅ・・・」
「・・・正直、ダメかと思った・・・」
感慨もひとしお。
礼文島の夜はそのくらい寒かった。
多分、冷凍庫よりも寒かったと思う。
そして、香深港のそばにある「旅館桜井」を見つけ、飛び込みで宿泊させていただいた。
「それは大変でしたね」
と、女将さんは半ば呆れながらも丁重に饗してくれた。
礼文島、冬は寒いが人の心は温かい。
離島巡りの時は小銭も持って行きましょう。
雪国を舐めちゃあいけない、そんなこんなの思い出。
※画像はイメージです。
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