日本のシカの中で最大級の大きさを誇る「蝦夷(エゾ)シカ」について、お話をしていきます。エゾシカの基本情報や、歩んできた歴史、これからのコトを記事にまとめました。
エゾシカを知ることは北海道を知ることと同じです。
私たちの住む世界だけのことではなく、北海道の広大な自然を守るためにエゾシカは重要なキーワードなのです。
また最終章では、北海道でしか味わえないエゾシカ肉の料理もご紹介いたします。
北海道では身近な動物【エゾシカ】
北海道でエゾシカに遭遇する確率は非常に高いです。市街地でもひょっこり現れることもあります。見た目は可愛らしく、雄シカには立派な角が生えています。
エゾシカの「蝦夷(エゾ)」は北海道を表現する言葉です。
エゾシカの歴史を辿ることは、北海道の歴史を辿ることにも繋がるので、知っておくと、さまざまな発見があり興味深いですよ。
知っているようで知らない?エゾシカの基本情報
北海道を限定として生息しているニホンジカの一種であるエゾシカの生態に触れていきます。
エゾシカの生態と性格
北海道に生息しているエゾシカは、日本の鹿の中でも最大級の大きさを誇っています。雄ジカと雌ジカの体長・体重は以下の通りです。
オス
体長:約90〜190センチ
体重:約50〜150キログラム
メス
体長:約90〜150センチ
体重:約25〜80キログラム
エゾシカはとても臆病な性格をしています。そのため、滅多なことで人間を襲うことはありません。
エゾシカは群れで行動をする動物です(雄ジカと雌ジカでは別の群れで行動します)。
エゾシカの運動能力は長けていて、彼らは2メートルから3メートル近くジャンプすることが可能です。
エゾシカは跳躍力が非常に優れている動物です。エゾシカの寿命は約4年で、飼育下の個体では、最長20年生きたという記録もあります。
エゾシカは何を食べているの?
エゾシカは草食動物です。彼らは一日に約5キログラムもの餌を食べて生活しています。主に、木の葉や野草、ドングリを好んで食べます。
冬季になると、木の枝(若い枝で柔らかいもの)や樹皮を食べて春を待ちます。
またエゾシカの数が増加している関係で、近年では農作物(野菜や小麦など)まで食べてしまい、農林への被害が問題視されています。
エゾシカの生息地はどこ?
エゾシカは北海道全域に分布しています。低地から山地まで、森林地帯や野原など広い部分で生息しています。
エゾシカの繁殖について知りたい!
エゾシカは一夫多妻性です。雄ジカ同士で力比べをして、勝負に勝った雄ジカがリーダーとなります。リーダーの雄ジカは群れの雌ジカと繁殖する事ができます。
エゾシカの交尾の期間は10〜11月と決まっています。ただし、雄ジカが交尾可能な期間は10日ほどと短く、その間に雄ジカは一日数回の交尾をおこないます。
雌ジカの妊娠期間は約230日前後です。出産時期は6月〜7月にかけてです。子ジカは、生後4ヵ月で50キログラムにまで成長します。
エゾシカの繫殖能力は高く、近年エゾシカの個体数は増加傾向にあります。
エゾシカの一生を見てみる
下記記のサイクルでエゾシカは生活を送っています。
- 12月~3月 越冬期
- 4月~5月 落角(※)
- 6月~7月 出産期
- 10月~11月 繁殖期
※落角(おちつの)とは、雄ジカの角が新しい角に生え変わることをいいます。一歳の雄ジカの角は枝分かれはしませんが、二歳頃から角が枝分かれします。
また、10月から11月にかけての繁殖期はエゾシカの行動が活発になります。とくに雄ジカは攻撃的になる傾向にあり、普段よりも注意が必要です。
夏のエゾシカ、冬のエゾシカ
エゾシカは夏季と冬季では、その見た目に変化が起こります。毛の色が夏季では、淡い茶色の被毛に、白い斑点の模様が目立ちます。
一方で冬季になると、エゾシカの被毛は濃い茶色に変わります。
エゾシカは北海道の自然の一部【エゾシカの歴史に学ぶ北海道】
この章ではエゾシカの歴史を学んでいきます。エゾシカは北海道の自然の一部とされています。
北海道の歴史を紐解くのに、エゾシカの歴史は必須だと言えます。それくらい、北海道民にとってエゾシカは身近な存在なのです。
実は絶滅危惧種だった?
近年ではエゾシカの個体数は増加傾向にあります。増え続けるエゾシカにおける社会問題が増えています。
そんなエゾシカですが…以前は絶滅が危惧されていた動物だったのです!
明治初期、北海道の開拓が進むにつれてエゾシカは大量に狩猟されるようになります。同時期に、農地の開拓の為エゾシカの生息地である森林を伐採。
追い打ちをかけるように1879年に大雪がエゾシカを脅かします。
雪に埋もれてしまうと、エゾシカは腹這いになって移動する他ありません。ただでさえ食べ物が少ない冬の時期です。雪が積もってしまっては木の葉も木の皮も食べられません。餌を満足に食べられなくなったエゾシカは栄養不良で餓死の危機に晒されます。
- エゾシカの乱獲
- 記録的な大雪に見舞われる
- 北海道開拓による、森林破壊
上記の理由により一時はエゾシカの個体が激減し、絶滅寸前とまでなりました。
なんとか絶滅を逃れたエゾシカの【その後】
絶滅寸前まで追い込まれたエゾシカは、保護政策等に守られて、順調に個体数を増やしていきました。しかし今度はエゾシカの個体数が急増したことにより、さまざまな社会問題が浮上してきます。
令和元年のエゾシカの推定生息数は67万頭に及びます。エゾシカが増えてしまったのは以下の3点が考えられます。
- エゾシカの天敵だったエゾオオカミの絶滅
- 農地がエゾシカの恰好の餌場として認識される
- エゾシカを狩るハンターの数が減少した
エゾシカが与える4つの社会問題
急増したエゾシカは放置できない事態を招いています。深刻な問題とされているのが以下の4点です。
①【自然植生への影響】エゾシカが生態系を破壊する?
北海道全域の森林等で問題視されているのが、エゾシカによる踏みつけや採食です。エゾシカは広葉樹の皮をむしるように食べてしまいます。
※写真をお願いいたします。(樹の皮がない写真があれば幸いです)
草地の衰退や土砂崩れ、落石等が発生する深刻な問題も起こっています。果実類が大好物のエゾシカは、ヤマグワやヤマブドウなども食します。昆虫などのへの影響も懸念されています。
②【交通事故への影響】エゾシカが電車を止める?シカストライクで遅延も・・・
もしも東京都内で遅延が起こるとしたら、それは人身事故か自然災害のどちらかでしょう。しかし北海道全域の電車の遅延理由のひとつに「シカストライク」と呼ばれる、エゾシカと電車の衝突があります。北海道ではエゾシカが線路内に侵入してくることが多々あります。そのためエゾシカが原因で遅延する電車が発生するのだとか。
さらに、エゾシカとの衝突事故は電車に限ったことではありません。道路を走行中の自動車の前にもエゾシカは悠然と飛び出してきます。
エゾシカの体重は雄ジカで最大150キロ程度です。車のフロントガラスにエゾシカをまともに受ければ、私たち人間にも被害が及ぶ可能性が高くなります。
ではエゾシカが道路に飛び出してきたら、私たちはどういった行動を取れば良いのでしょうか?
もしも車の走行中にエゾシカが飛び出してきたら!?
北海道ではエゾシカと車の衝突事故の発生が多いです。そのため、北海道では、お馴染みの黄色い看板で『動物注意』または『鹿飛び出し注意』の道路標識が多く設置されています。
看板を見つけたら、車の速度に気を付けましょう。エゾシカはとくに朝・夕に多く姿を現します。この時間帯は特に気を付けて運転するように心掛けてください。また、エゾシカは夜行性ではないですが、薄暗くなってから行動する個体もいます。夜間だからといって安心してはいけません。
万が一走行中にエゾシカが飛び出してきた時は、運転ドライバーは以下のことに注意してください。
- 無理にエゾシカを避けようとしない
- ハンドルを切るのではなく、ブレーキを踏み込み車を停止させる
エゾシカは群れで行動する動物です。道路に出てきたのが1頭だけとは限りません。
エゾシカと自動車の衝突事故による人間の死亡事故が発生しています。エゾシカの行動が活発になる秋頃や、視界の悪い夜間は、細心の注意をして運転をしましょう。
対策として、動物よけ警笛でシカの飛び出しを未然に防ごうと試みる自動車もあるみたいです。
③【農林への被害】エゾシカがもたらす農作物への被害とは
エゾシカによる農作物の被害は、エゾシカの大量発生に大きく関与しています。農作物のうち約半数が牧草の被害です。エゾシカによる被害が確認されている農作物は主にトウモロコシ、馬鈴薯(じゃがいも)、小麦、豆類などです。
近年エゾシカは市街地でも姿を現しています。民家への被害も報告されています。家庭で菜園している食物や、庭木などに被害が出ています。
④【感染症の有無】エゾシカは人畜共通感染症をもっているのか
エゾシカには6種類のマダニの寄生が確認されています。マダニとは、吸血をおこなうダニのことです。人畜共通感染症(ズーノーシス)を媒介することでも有名です。またエゾシカは、ダニ媒介脳炎やQ熱の媒介者でもあります。
私たちはエゾシカと、どう向き合うか?
ここまでエゾシカによる被害を見てきました。ここからは、エゾシカ問題と今後どのように向き合っていくべきかを考えていきます。
北海道ではエゾシカ管理計画として、様々な工夫が検討されています。下記の北海道エゾシカ管理サイトHPをご参照ください。
①狩猟
昨今では、個人のハンターによるエゾシカの個体数コントロールが難しいとされています。エゾシカを狩るハンターの数が減少傾向にあることが問題のひとつとなっています。
北海道エゾシカ管理サイトによると、北海道の取り組みとして「年間毎にエゾシカの捕獲目標を定める」「雌ジカの捕獲を優先させる」「高度で専門的な技術を用いたエゾシカの捕獲や、夜間での銃猟を検討」「遠隔システムを活用したエゾシカ捕獲の確率を高める」などの対策を行っています。
②オオカミの再導入を検討?
生態系の頂点に君臨するオオカミが絶滅してしまったことで、エゾシカの捕食者は2022年現在ではヒグマのみとなっています。
そこで、オオカミの再導入によりエゾシカの個体数を減少させるとの提案がなされています。海外ではオオカミの再導入を実施しているところもありますが、日本ではまだ提案段階です。オオカミを導入することにより、他の動物に悪い影響を及ぼさないかなど、社会的な問題からオオカミの再導入は難しいとも言われています。
③エゾシカ侵入防止柵の設置
エゾシカの侵入防止用に、高さ2〜3メートルの柵を設置しています。柵の他にも樹木の保護を目的としたネットも活用中です。
エゾシカ肉の料理って・・・実際どうなの?
エゾシカ増加問題の対策の一環として「エゾシカ肉を食べる」があります。狩猟したエゾシカの命を無駄にせず、牛や豚、鶏肉などと同じく「食用」として”いただく”のはとても大切なことです。
北海道へ旅行をされる予定のある方、そうでない方にも。是非、北海道の新鮮なエゾシカ肉をご堪能いただきたい。その想いで、最後の章ではエゾシカ肉について取り上げていきたいと思います。
北海道で食べるエゾシカ肉は格別!
ハンターの熟練度により味が決まるというエゾシカ肉は、鮮度が命です。北海道では駆除対象のエゾシカを、猟師から直に入手できます。そのため美味しい鹿肉を食べることが可能です。肉の部位によって調理の仕方を工夫するのも鹿肉を美味しくいただくコツです。
例えば、エゾシカ肉をカレー味に調理したり、焼肉にしたりアレンジをすることで、より美味しくいただくことができます。フランス料理で有名な「ジビエ料理」も人気です。
エゾシカ肉は女性にも嬉しい高たんぱく低カロリーです!鉄分含有量が豚肉や牛肉に比べて多く、魅力的な食材です。
鮮度抜群!エゾシカの狩猟期間は?
エゾシカ肉をより美味しくいただくには、猟期が深く関係してきます。北海道でのエゾシカ狩猟時期は10月〜翌年の1月末までと決まっています。期間は地域によって異なる場合があるので、事前に確認いただくと良いかと思います。
北海道でおすすめ!エゾシカ肉のお店
エゾシカ肉の美味しい食事処5店に加えて、エゾシカ肉のおすすめ通販サイトを2店をご紹介いたします。
北海道内で、エゾシカ肉の料理を味わえるおすすめレストランをご紹介します。
①リーズナブルな価格で鹿肉を堪能!メニュー豊富な【知床食堂】
イクラやウニの贅沢な海鮮丼の他に、エゾシカ肉を使用した「鹿肉カレー」や「鹿肉生姜焼き定食」などメニューが豊富な食事処です。エゾシカ肉をリーズナブルな価格で食べることが出来ます。
②鹿肉のステーキが最高に旨い!ドッグランも兼ね備えた【鹿肉レストラン 山恵】
鹿肉のスープやシチューにメンチカツにパスタまで!鹿肉だけでお腹がいっぱいになる、鹿肉三昧のお店です。人気メニューである鹿肉のステーキは嬉しいご飯とスープ付き!Facebookでの情報も満載です。是非チェックしてみてください。
③子供から大人まで楽しめる道の駅・阿寒丹頂釧路併設【レストラン鶴】
こちらのレストランでは、上質な鹿肉ステーキを提供しています。料理メニューも豊富で、道の駅に併設されているレストランということで、ご家族で楽しむことができます。
また驚くことに「レストラン鶴」では、丹頂が見れるのだとか…。
④鹿肉だけじゃない!空間にも徹底したこだわりを!【鹿肉&オイスターバル SLOW DOWN】
こだわりの空間づくり、心をこめたおもてなし、店長のおすすめ料理など、魅力満載の「SLOW DOWN(スロウダウン)」では、鹿肉料理だけでなく、お店の空間づくりにもこだわっています。注文率脅威の90パーセントを誇る『仔鹿のロースト 季節の野菜添え』に舌鼓を打つこと間違いなし!臭味がなく、ヘルシーな一品と人気を集めています。口コミの反響が絶大です。
⑤自社工場より直送!成熟エゾシカ肉を味わう!【シカ肉レストラン あぶかの森】
「あぶかの森」の看板メニュー「おまかせ3種盛りステーキセット」はエゾシカのいろいろな部位が楽しめる人気の鹿肉料理です。店内の落ち着いた雰囲気に、ゆったり身を委ねて食事を楽しむことができます。他にも「あぶかの森」自家製エゾシカ肉のソーセージにチーズたっぷり、鹿肉ソーセージを贅沢に堪能できるシンプルなピザが人気となっています。
さいごに・・・『いただく』ということ
あっさり美味しい鹿肉料理。
鹿肉は臭味が強く出ると聞いたことがありますが、アレは噂に過ぎないですね。北海道で食べる新鮮なエゾシカ肉は栄養が豊富なうえに旨い!とくる。
文句なしの一品です。
動物を「食べる」ことに当初こそ尻込みする部分があったものの、よく考えてみると、私たちの食卓は豚や牛、鶏肉の料理で溢れています。
毎日のようにお肉を食べている。魚も同じです。
生きものを『食べる』『いただく』ということは、命を粗末にしないことに直結しています。駆除して処分するのではなく、美味しくいただく。
私たちが生きていく上で欠かせないことです。
エゾシカが与える北海道での問題は、なにも人間だけでなく、森や山の植生にも影響している。
生態系を守っていくこと事態が今度の人類の課題でもあるように捉えています。本記事を読んで、自然との共存を考えるキッカケになれたら幸いです。
※画像はイメージです。
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