知らないと恐い!キタキツネに感染するエキノコックスの正体とは

北海道のニュースや報道でよく耳にするエキノコックス。しかし、エキノコックスの正体について知っている方は少ないのではないでしょうか。よくキタキツネの画像や動画とともに流れてくるエキノコックスですが、キツネの種類ではありません。

エキノコックスは寄生虫の一種です。

この記事ではエキノコックスの生態や正体を解説すると同時に、その危険性や感染対策などについてお伝えしていきます。

目次

可愛いからといってキタキツネに触れるのは危険

毛づくろいをする姿、からだを丸めて眠る様子、人懐っこい性格を兼ねそろえたキタキツネは非常に人気の高い北海道の動物です。

しかし、いくら可愛いからといって安易に手を出してはいけません。キタキツネはエキノコックスを媒介する野生の動物であり、キタキツネに触れることでヒトがエキノコックスに感染してしまう恐れがあります。

もしも野生のキタキツネを見かけても、触れたり、餌づけをしたりしないようにしましょう。

エキノコックスの感染経路

エキノコックスはどのようにしてキタキツネに感染するのか。ここでは気になる感染経路について解説します。
エキノコックスの感染経路はひとつのサイクルによって形成されています。

  1. エキノコックスに寄生された野ネズミ(中間宿主)をキタキツネが食べることで、エキノコックスがキタキツネ(終宿主)の腸内に寄生
  2. キタキツネの糞と一緒にエキノコックスの虫卵が体外へ排出される
  3. 野ネズミのエサや水に混入することで野ネズミに感染
  4. 1〜3を繰り返す

ヒトへの感染経路

エキノコックスに感染した動物に直接触れる、または感染動物から排出された糞によって汚染された土や草に触れ、それらを口にした場合にヒトへ感染します。

つまり直接キタキツネに触れなくても、たとえば、キタキツネの毛に付着したエキノコックスの卵を口にしてしまったり、強い風によって卵が空中に舞ってしまい、それを吸いこんでしまった場合も感染の危険性があります。

感染するのはキタキツネだけじゃない

これだけキタキツネで騒がれているエキノコックス症ですが、じつは感染する動物はネズミやヒト、キツネだけではありません。普段から私たちの身近な存在として親しまれている犬もエキノコックスに感染することが知られています。

エキノコックスへの感染対策

エキノコックスがヒトからヒトに感染することはありませんが、一度エキノコックスに感染してしまうと非常に厄介です(下記にて詳しくお伝えします)。ですので、まずはエキノコックスに感染しないための対策を取ることが肝心です。

  • 野生のキタキツネやイヌに触れない
  • 公園や野山で遊んだあとは手洗いを徹底しておこなう
  • 服や靴についた泥をよく落とす
  • 山で採ったキノコや山菜は充分に洗い、加熱してから食べる
  • 飼い犬を野放しにしない(野ネズミを食べさせない)
  • 沢の水や湧水を飲まない(70℃以上のお湯で1分以上沸かしてから飲む)

エキノコックス症はこれらの対策をすることで予防することができます。

エキノコックスの正体

ここからはエキノコックスの生態についてお伝えします。そもそもエキノコックスとは、どういった生きものなのでしょうか?

エキノコックスは扁形動物門に属するサナダムシの一種です。エキノコックスには単包性と多包性とがあり、北海道で確認されているのは多包性のエキノコックスです。

エキノコックスには3つの発育段階があります。

  1. 虫卵
    成虫のエキノコックスとは異なり、虫卵は非常にちいさく、直径0.03ミリ程度で肉眼で確認することはできません。
  2. 幼虫
    エキノコックスの幼虫は野ネズミなど中間宿主動物の体内では幼虫のままで増えつづけます。幼虫が成虫(親虫)に成長するのはキタキツネの腸内です。
  3. 成虫(親虫)
    成虫の体長は約4ミリほどの白い寄生虫で、肉眼でも確認することができます。エキノコックスのからだは4〜5つの部分でつながっており、からだの下の部分に卵ができます。卵は成熟するとはずれてキタキツネの糞と一緒に体外へと排出されます。

ヒトに感染するとどうなる?

万が一エキノコックスに感染してしまった場合、具体的にはどんな症状があらわれるのでしょうか?

エキノコックスはヒトの小腸から血管に入ります。血管に入ったエキノコックスはやがて肝臓や肺に達し、最終的には臓器の機能障害がおこります。

さらにほかの臓器に転移し、場所によっては重篤化する恐れもあります。現在エキノコックスによる致死率は、手術などの適切な治療を受けたとして平均2.2パーセントとされています。

また、感染してから一定の期間は無症状の状態(潜伏期間)があるのも特徴です。エキノコックスの潜伏期間は数年〜10年とかなり長めです。

肝臓の機能障害に伴う「疲れやすさ」や「黄疸(肌や白目の部分が黄色くなること)」「右側腹部の痛み」など、エキノコックスに感染した疑いがある場合は、すぐに医療機関に相談するようにしましょう。病期や状態にもよりますが、エコーやCTなどの精密検査で検出できるほか、血液検査(血清)にて陽性と出ることもあります。

※現段階ではエキノコックス症に効く薬はないため、幼虫を取り除く手術が主な治療法となります。

キツネはエキノコックスに感染しても死なない?

エキノコックスの幼虫に感染した野ネズミは最終的には肝臓が弱り、死に至ります。しかしキタキツネはエキノコックスに感染しても死ぬことはありません。

これはいったいなぜなのでしょうか?

エキノコックスは「中間宿主」と「終宿主」と呼ばれる2種類の宿主で寄生する部位が異なります。ネズミ、ヒト、ブタなどの中間宿主の場合、エキノコックスは肝臓に寄生して幼虫となります。

ところが、終宿主であるタキツネの場合エキノコックスは小腸に寄生して成虫となります。成虫となったエキノコックスはキツネの糞と一緒に体外に排出されるため、キツネは死に至らないといわれています。

エキノコックスは北海道だけじゃない?!

2024年現在、ヒトがエキノコックスに感染する地域としてもっとも多いのが北海道です。しかし近年では青森県に次いで、東京や大阪など、本州でもエキノコックスの感染が報告されています。2014年には愛知県の山間部で発見された犬からエキノコックスが検出されています。このことを受けて専門家は周辺で感染が広がっている可能性があるのではないかと懸念を示しています。

エキノコックスと動物

エキノコックスの生態、感染、予防についてお伝えしてきましたが、いかがでしょうか。
とくに私たちの身近な存在である犬にもエキノコックス感染の危険があることは驚きだったのではないでしょうか?

ペットである犬は野生のキツネと比べてヒトとの接触率が高くあります。そのため、飼い主への感染リスクもあがってしまいます。これらを防ぐためにも定期的な健康診断が大切だと感じました。

飼い犬の場合、動物病院で便検査をおこなう、駆虫薬を使用する(虫卵にも効果のあるものを使用)などの予防が考えられます。
エキノコックスに感染しないためにも一人ひとりが他人事としてではなく、自分の事として予防の意識を持つことが重要。そのことをあらためて実感しました。

※画像はイメージです。

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