北海道で急増中!アライグマによる被害

いま北海道で急増している動物「アライグマ」の生態やアライグマが増え続けている要因、なぜ害獣と呼ばれているのでしょう?
実際にアライグマに出くわした際や被害に遭ったとき、どうしたら良いのかをお話していきます。

目次

タヌキとアライグマはどこが違うの?

きゅるんとした瞳にちいさな鼻やユニークな顔の模様など、アライグマは非常に可愛らしい印象を与えてくれる動物です。同じような容姿を持つ動物に「タヌキ」がいますが、タヌキがイヌ科なのに対してアライグマは食肉目アライグマ科に分類される哺乳類の仲間です。

双方はとてもよく似ているので判別がつきにくいのですが、見分けることは可能です。たとえばタヌキには4本の指があるのにたいして、アライグマには私たち人間と同じく5本の指が生えています。ですので、足跡を見ればすぐに見分けることができます。

さらにアライグマの尻尾はシマシマ模様がありますが、タヌキの尻尾には模様がありません。またアライグマの尻尾はタヌキの尻尾に比べて長いのが特徴です。

野生のたぬき

アライグマの歴史と生態について

とつぜんですが、皆さんはアライグマと聞いてどんなイメージを持たれますか?

日本でアライグマが注目されるようになったのは、1970年代に放映されたアニメやテレビCMの影響が大きいといわれています。さらに動物園に展示されていたアライグマをひと目見て虜になった方も多いのではないでしょうか。

大人気となったアライグマは1990年代頃にペットとして日本に大量に輸入されました。
そうです。アライグマはもともと日本に生息している動物ではなかったのです。なので、アライグマは外来種指定。もとから生息していたタヌキなどの在来種とは異なります。

アライグマってどんな生きもの? アライグマの生態

アライグマの体長は約60〜100センチほど。尻尾の長さは2〜4センチほどです。同じ害獣と呼ばれているイタチ科の動物の倍以上の大きさがあり、体重は約2〜10キロです。

灰色〜赤褐色の毛をしていて、目のまわりには黒い模様がひろがっています。

アライグマは滅多に鳴かない動物ですので、声を聞くことは稀ですが、「キュキュ」「クルル」「クックック」と鳴くことが多いです。また歯を剥いて「シャーシャー」「ギューッ」という声をあげているときは威嚇している場合が多いので注意しましょう。

寿命

アライグマの寿命は野生化で約5年。
飼育下では約15年といわれています。

繁殖期

通常アライグマは1〜2月の寒い時期に交尾をおこないます。そのあと3〜4月の春先に出産し、1回の出産で平均1から6匹の子どもを産みます。

アライグマは冬眠する? しない?

地域によっては氷点下20度を記録する北海道の冬。食料、気温の低下にともない多くの生きものたちは冬眠をします。
もちろんアライグマも………と言いたいところですが、アライグマは冬のあいだ冬眠をしません。

そうはいっても食べものを探すのも一苦労の冬です。外を歩くだけでいつ雪に呑まれてしまうか知れたものではありません。そこでアライグマたちは冬眠の代わりに「休眠(半冬眠)」をします

エネルギーを節約して、自発的に数か月のあいだ深い眠りに入る冬眠とは異なり、休眠は1日の睡眠時間を増やすことをいいます。眠っているときはアライグマの体温や呼吸、心拍数、代謝が低下します。その反面、活動しているあいだは正常な体温や呼吸、代謝を保っているので、北海道の厳しい冬でもアライグマは活動することができるのです。

また、民家の天井裏などは野外に比べると気温も高いので、アライグマたちも過ごしやすいのでしょう。冬でもアライグマによる被害は報告されています。

野生のアライグマ

実はどう猛?アライグマの性質を知る

上記でも述べたとおり、アライグマは可愛らしい顔つきをしている動物です。5本の指先を器用に使ってモノを持つ姿など、アライグマが私たちに与えるイメージはユニークでどれも好印象なものばかりです。

その印象が定着しているためか、多くのひとがアライグマは穏やかで人懐っこい性質であると思いこんでいます。
ですが、じつはアライグマ。
かなり”どう猛な動物”として有名なのです。

1990年代のアメリカからの大量輸入にともない、日本国内でペットとして飼育をはじめる家庭が増えました。しかし、アライグマの気性が荒かったため飼育には向かず、中には飼い主のもとから脱走してしまうアライグマも出てしまいます。

昭和54年には、北海道恵庭市(えにわし)で飼い主のもとから逃げ出したという記録も残っています。

極めつけは、「もうこれ以上飼育ができない」という理由で飼い主が自らアライグマを捨ててしまうケースも続出。もともと日本には野生のアライグマは一匹もいなかったはずなのに、いつのまにか多くのアライグマが野生化してしまったのです。

最近では北海道全域でアライグマが目撃されています。1993年(平成5年)にはじめてアライグマによる農業被害が確認されて以降、現在にいたるまで多大な被害をもたらしてきたアライグマ。現在では特定外来生物(害獣)に指定され、さまざまな対策がとられています。

ちなみに害獣とは「農作物を荒らす、家畜を襲うなど、人間に害を与える獣」のことをいいます。

今なお増え続けているアライグマ

現在も増え続けているアライグマですが、そもそもどうしてかれらはここまで増えてしまったのでしょうか?
北海道でアライグマが増え続けている要因はいくつかあります。

  1. 天敵が少ない
    北海道にはアライグマを捕食するような肉食獣があまりいません。天敵が少ない環境で安心して生活できることがアライグマが増えた要因のひとつとされています。
  2. 高い繁殖力
    アライグマは1回の出産で1〜6匹の子どもを産みます。1年間で数回繁殖をすることも可能なため、個体数を急速に増やすことができます。
  3. エサが豊富
    アライグマは雑食性です。北海道にはアライグマがエサとする果物、野菜、木の実、昆虫、魚、エビ、ペットフードなどが豊富に存在します。こうしてエサに困らないこともアライグマが増加している要因です。
  4. 環境への適応能力
    アライグマは寒さにも強く、また、さまざまな環境に適応できる動物です。北海道の気候でも問題なく暮らすことができます。

以上の要因が絡みあいアライグマの個体数は増加したと考えられています。

アライグマによる被害

ここでは、アライグマによる具体的な被害を見ていきましょう。上記にもありますが、アライグマは冬眠をしないため、季節を問わず被害報告がされています

下記はアライグマがもたらした実際の被害例です。

健康に関する被害

アライグマの糞などから「アライグマ回虫」や「糞線虫」に感染してしまう恐れがあります。また、狂犬病やSFTSウイルスなど感染症のリスクにも注意が必要です。ほかにもマダニやノミによる健康被害、喘息を引き起こす要因になるケースもあります。

住宅の被害

とくに多いのが「アライグマが天井裏に入りこんでしまった」場合の被害です。アライグマは同じところに糞をする”溜めフン”の習性があります。天井裏での異音のほか、糞尿による悪臭、屋根裏などの腐食といった被害が報告されています。

あまりに腐食が進んでしまうと、リフォーム工事をしないといけなくなったりしますので、早めの対処が必要です。
アライグマの糞は病原菌を媒介するため、見つけても安易に触れないようにしましょう。

このほかにも犬などのペットが襲われて負傷してしまったり、生ごみを荒らされるなどの被害も確認されています。

以下にアライグマによる主な被害をまとめてみましたのでご参考ください。

アライグマによる主な危害

  • 生態系への影響
    日本の在来種を捕食することで、生態系のバランスを崩す可能性があります。
  • 農作物への被害
    果物や野菜を食い荒らすなど、農家に大きな損害を与える場合があります。
  • 家庭への侵入
    部屋裏や壁のなかに入りこみ、建物を糞尿で汚したり、建物自体を傷つけてしまうことがあります。
  • 感染症の媒介
    狂犬病などの感染症を媒介する恐れがあります。
  • 人への被害
    追いつめられることで攻撃性が高くなり、人に危害を加えることが報告されています。

アライグマに気をつけよう

ここではアライグマがどんなところにいるのか、見つけたときにどのような対処をすればいいのか、についてお話します。

アライグマはどこにいる?

アライグマはもともと北アメリカの森林や湿地を中心に生息していました。とくに水に近い場所を好む傾向があります。基本的にアライグマは夜行性で、日中は洞窟や屋根裏に入りこんで休んでいる個体が多く見受けられます。

近年、北海道ではアライグマが民家や農地、住宅街を歩く姿がたびたび目撃されています。

また、アライグマは水泳や木登りが得意で120メートル離れた場所に飛びうつることもできるほどの優れた身体能力を持っています。住宅の近くの植木や物置などを伝って屋根裏に侵入したり、または換気口から中に侵入するケースもあります。10センチほどの隙間があれば簡単に侵入できてしまうというのだから驚きです。

アライグマを見つけたら…

アライグマを見つけたら、まずは近づかないようにしてください。攻撃性の高い動物です。被害をこうむったからといって、むやみに手を出すのは危険です。

そして厄介な事に、外来生物法に規定された「特定外来生物」かつ、鳥獣保護法で保護されているほ乳類に指定されている事から、自治体の許可、もしくは、狩猟免許を持っていないとアライグマを駆除する事はできません。
たとえば、毒を練りこんだエサや箱罠などの設置でアライグマを駆除しようとお考えの方もいるかもしれませんが、「わな猟免許」が必要となりますので、無断で実行してしまうと法で罰せられる事があります。

農作物を荒らされたり、自宅の天井裏に侵入されて困っている方は、行政機関や専門業者に依頼するようにしましょう。

事前にできるアライグマ対策

アライグマによる被害を減らすためには、アライグマの生態や実際にあった被害、対処方法などをあらかじめ知識として正確におさえておくことが大切です。

また、住宅にアライグマが侵入するのを防ぐためには次のような方法があります。

  • 侵入口になる隙間を塞ぐ(アライグマは10センチの隙間からでも侵入が可能です)
  • ペットのエサを放置しない
  • 部屋にのぼらせない対策をする(高い植木を切る、物置の位置を変えるなど)
  • 作物に網をかけるなどして保護する
  • アライグマ忌避剤グッズを使用する

アライグマは可哀想な存在でもある

たしかにアライグマは攻撃性が強く、気性も荒いといえます。私たち人間や農作物に多くの被害をもたらしているのも事実です。
しかし、もとは北アメリカにいた動物です。

今でこそアライグマは害獣として扱われています(特定外来生物に指定)が、もとはと言えばアニメが流行り、1990年頃に輸入され、日本でペットとして人気になった動物です。

つまり、アライグマは自ら手を挙げて日本に渡ってきたのではなく、あくまで私たち人間によって連れてこられた動物なのです。
これはアライグマにしてみたら迷惑なことで、そのことも踏まえると複雑な気持ちになります。

「見た目がカワイイから」「なんか一緒に暮らしたら癒されそう」といった安易な理由で、第二のアライグマを生みださないことを心から願っています。

そして最後に、これは記事内にも書かせていただいたことですが、アライグマを見かけても決して近づかないようにしましょう。
とくに住宅街ではお子さんも多くいるかと思います。好奇心旺盛な子供たちがアライグマの被害に遭わないように。

本記事がアライグマでお困りの方たちのお役に立てましたらうれしいです。

アライグマの捕獲情報(資料)

※画像はイメージです。

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