かつて北海道では炭鉱が栄えていました。石炭は北海道の貴重なエネルギー源として重宝され、「黒いダイヤ」と呼ばれるようになります。その後、石炭産業は衰退してしまったわけですが、現在、北海道では”黒”ではなく「白いダイヤ」と呼ばれるホタテが大量に獲れるようになりました。
この記事では、北海道の白いダイヤ「ホタテ」について深堀りをしていきます。ホタテの生態から経済的影響、白いダイヤと呼ばれている本当の理由など、さまざまな角度からホタテについてお伝えしていきます。
そもそもホタテってどんな貝なの?
ここではホタテの生態や生息地、名前の由来についてお伝えします。
ホタテ貝の生態
ホタテは二枚貝の一種です。イタヤガイ科に分類される軟体動物の仲間で、寒冷海洋性の生きものです。現在、世界で300種ほどが知られています。食用としても重宝されるホタテは、その美しい貝殻と弾力のある身が特徴です。
ホタテは二枚貝の中でもとくに活発に動きまわることで知られています。危険を感じると自らの貝殻をパカッとひらいて水を噴出しながら、すばやく移動します。
貝殻は左右非対称で、縞模様が入っている個体が多いです。この模様は、ホタテの年齢や生息環境によって異なり、いわば木の年輪のような役割を果たしています。
ホタテは寒い地域の冷たい海に生息しており、生息できる水温は5〜22℃。夏季に水温が上昇し、20℃を超える日が続くと斃死(へいし)してしまいます。
ホタテ貝 名前の由来
ホタテという名前の由来には諸説ありますが、一般的には「帆掛け船(ほかけぶね)」に由来しているといわれています。ホタテが貝殻の一片を船の帆のようにひらく姿と、風を受けて帆走する帆掛け船が似ていたことに由来します。
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ホタテの生息地
ホタテは世界中の海に広く分布している貝ですが、中でも寒流域の海を好みます。日本では北海道をはじめとする青森県、宮城県、岩手県が主な生息地です。
ちなみに日本で食用として生産されているホタテ貝には、下記の4つの仲間がいます。
- ホタテガイ
- イタヤガイ
- アズマニシキガイ
- ヒオウギガイ
この中でもホタテガイは成長が早く大型になることで有名です。また、いずれの貝も日本では東北に生息します。
ホタテにも目がある?
突然ですが、みなさんご存知でしたでしょうか?
じつはホタテ貝には目があるんです。
外套膜の周辺、黒い点のようなもの。これがホタテの目です。
ホタテの目は上下の貝殻をあわせて80個ほどもあります。とはいってもモノを識別するのではなく、光を感じるための機関としての役割を担っています。
ホタテなどの二枚貝の多くは自分から食べものを探しにいきません。そのため、光を感じる程度の目となっているのですね。
なぜホタテといったら北海道なのか?
日本の食用ホタテにはいくつかの種類があります。中でも北海道で獲れるホタテは肉厚で貝柱がしっかりしていることで知られています。
なぜそれほど肉厚なホタテなのかというと、その一つに北海道の恵まれた環境があげられます。北海道の海は冷たくて栄養価の高いプランクトンが豊富です。北海道のホタテは、このプランクトンをエサとしているため、サイズが大きいといわれています。さらに沿岸にはホタテの養殖に適した比較的おだやかな海域が多く存在しています。
漁業技術の発展
北海道の漁業には長い歴史と伝統があります。とくにホタテの養殖技術は世界トップレベルといえます。ホタテの養殖方法としては以下の2つの方法がおこなわれており、どちらも高品質なホタテを生産するのに欠かせない方法です。
- 地撒き(じまき)式
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主にオホーツク海や根室海峡でおこなわれている方法で、稚貝を海底に放し、約2〜4年をかけて成長させて漁獲します。自然の状態で成長させるため貝柱が引き締まるのが特徴で、夏から秋にかけて水揚げがおこなわれます。
- 垂下(すいか)式
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主に日本海や噴火湾でおこなわれる漁法です。稚貝をロープや籠にいれて海中に吊りさげて約1〜2年かけて漁獲します。冬から春にかけて水揚げされることが多いのが特徴です。
北海道ならではのホタテ
北海道で獲れるホタテは、ほかの地域のホタテに比べると質が高いことで有名です。これは北海道の冷涼な気候や海水、漁民たちの熟練された経験と技術によるものと考えられます。
一般の観光客はもちろんのこと、一流の料理人をも魅了する北海道のホタテ。このホタテを目当てに海外からやってくる人もいるというのだから、やはり北海道のホタテは一線を画しているといえるでしょう。
北海道のホタテといえば猿払
さて、北海道で獲れるホタテの特徴や魅力をご紹介してきました。
ここからは北海道のホタテの中でもとくに注目を集めているホタテ「猿払のホタテ」についてお伝えしていきます。
道内で有名なホタテの産地として名を馳せているのが、猿払(さるふつ)村です。猿払のホタテは濃厚な旨みと大粒の身が特徴とされ、長いあいだ高級食材として高い評価を受けています。
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どうしてそれほど美味しいホタテが育つのか?
猿払のホタテが賛美される理由。そのひとつに生育環境があります。猿払沖の潮は流れが激しく、冷たい海水が混ざりあう豊かな海域です。また、北オホーツク海から流れてくる大量のプランクトンを食べて育つため、猿払のホタテは身の引きしまった大ぶりで肉厚、濃厚な味を実現する高品質なホタテとなります。
繊維の旨みが凝縮された猿払のホタテは、嚙めば嚙むほど甘みが広がるのも特徴。弾力のある歯ごたえと天然が生んだ旨みを味わえる猿払のホタテは、国内だけでなく、海外でも注目を浴びている北海道が誇るホタテのひとつです。
「白いダイヤ」その本当の意味とは…?
北海道のホタテは味だけでなく、見た目も非常に美しいことで有名です。北海道のホタテが「白いダイヤ」と呼ばれている由来のひとつもここにあります。
ですが、白いダイヤと呼ばれている理由はそれだけではありません。
ホタテの経済効果
北海道のホタテが白いダイヤと呼ばれている理由は、その価値と北海道の経済を支える重要な枠割を担っていることが大きく関与しています。
ホタテは北海道の重要な水産資源のひとつであり、地域経済に多大な貢献をしているのです。とくに猿払村のようなちいさな漁村においては、村の収入源の大部分がホタテ漁だといわれています。
想像以上の年収に驚愕!日本一裕福な漁師
先ほどもご紹介した猿払村のホタテ漁師の中には、年収が3000万円を超える漁師さんもいるのだとか…。人口 2,642人(2024年現在)の猿払村ですが、その平均年収は全国3位といわれています。そのためか、移住を希望する人も続出しているそうです。これぞ日本一裕福な漁師といえますね。
平等な収入
漁師間での競争がない猿払村では、漁師全員が協力をしてホタテ漁をおこなっています。収入は一定に決められているので、どの船が(だれが)どのくらいホタテを獲ったのかといったことは無関係。この仕組みがあるので、村の漁師たちは平等に収入を得ています。
さいごに
北海道とホタテのお話、いかがでしたでしょうか?
この記事ではホタテの生態から、北海道とホタテの関係、北海道のホタテがなぜ美味しいと注目を浴びているのか、白いダイヤのほんとうの理由などをお伝えしてきました。
筆者は本記事を書いている間中、北海道のホタテが食べたくて仕方ありませんでした。調べてみたところ、通販で販売している会社さんも多いようです。
さらに驚くことに、北海道標津(しべつ)町では、小中学校の秋の給食に「いくら丼」や「サケのすり身」「ウニ」が提供されているとのこと。非常に羨ましいですね。
この記事でご紹介した猿払村では各自治会を通して、1世帯につき20枚のホタテを配布しているというのだから猿払村の村民に憧れてしまいます。
海の幸が豊富といわれている北海道。
これからも多くの食卓を彩ってくれることでしょう。
※画像はイメージです。
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