みなさんは、着ぐるみはお好きですか?
今回は、毎年札幌で行われる着ぐるみイベント「ちるこん」をレポートしていきます。
着ぐるみといえば「ひこにゃん」「くまもん」を代表とし、多くの自治体や企業がイメージキャラクターとして「ゆるキャラ」を持っており、着ぐるみ化する事によって、地域おこしやキャンペーンなどのイベントで活用していますので、着ぐるみを目にする機会が増えています。
そうすると「ちるこん」って「ゆるきゃら達が集まるようなイベント?」とイメージされるでしょうが、「ちるこん」での着ぐるみは「ゆるキャラ」のそれとはちょっと違うようです。
ゆるキャラの着ぐるみと何がちがうの?
なにがちがうのか?といえば、「ちるこん」での着ぐるみはケモノ(kemono)とも呼ばれ、アメリカのマニアの間では主流の「fursuit(ファースーツ)」という動物のコスプレを日本流にアレンジした、簡単に言えば特殊なコスプレ衣装です。
動物でコスプレと聞くと、遊園地やデパートのキャンペーンなどでよく見かける動物の被り物や、「ポケモン」や「どうぶつの森」などの動物や幻獣をモチーフにした、アニメやゲームのキャラクターを想像される方も多いと思いでしょうが、それとはまた違うようです。
中にはそういったゲームやアニメのキャラクターもあるようですが、ほとんどがオリジナルキャラクターで、独自の世界観を「着ぐるみ」として表現し、オーダーメイドや愛好家によって自作されていますので一つとして同じ着ぐるみは無く、個性的なキャラクターが勢揃いします。
ちるこんとは?
正式なイベント名は「第10回 北海道ケモノ着ぐるみオフ(ちるこん)」。
マイナーなイベントではありますが、ほぼ毎年1回開催され、もう10回も続いている歴史あるイベントです。 国内では他にも、KemoconやJapan Meeting of Furries( JMoF)等の同様な着ぐるみイベントが開催され、年々参加者が増え規模が拡大しています。
ちるこんの名前の由来は、主催者のハンドルネームとコンベンション(convention) を合体させたものとの事 。
イベントではケモノ着ぐるみと触れ合ったり、イベント会場などでの記念撮影、大通公園では着ぐるみキャラによる楽器演奏を楽しめます。
イベントは2日間で、初日は札幌国際スキー場でスキーと前夜祭 、二日目はテレビ塔のメイン会場を中心に、大通公園、狸小路、札幌駅近辺で出没し、一般の方とも触れ合う機会があります。
「ケモノキャラクター限定ハロウィン」のような物と思っていただけると解りやすいでしょう。
主催者にインタビュー
お話を伺ったのは、主催の茅野比呂(ハンドルネーム:ティルラス)様。
キグルミマガジン元副編集長、札幌国際芸術祭元スタッフ、Kemoconサブスタッフ、けもケットスタッフ等の活動をされています。
所有されている着ぐるみは「コウヨウ」。
着ぐるみを始めた理由は?
昔からエジプト神話に登場するアヌビスのような二足歩行の動物に格好良さを感じ、憧れのようなものを抱いていました。
ある日ネットサーフィン中に、まさしく自分が憧れる二足歩行の動物姿の写真を見つけ、それが着ぐるみだと知ります。
それから、東京で開催される着ぐるみイベントの存在を知り、Youtubeでは海外の着ぐるみダンス動画を見つけるなどをきっかけ にどんどんこの世界にのめり込みました 。その後 、地元で着ぐるみの姿を生で見たのが引き金で作り始めました。
イベントの見どころは?
うーん…難しい質問ですね…(笑)。参加者にはかなり自由に動いてもらっている性質上、見る角度によって見え方が変わってきますが、ここでは二つ紹介させていただきます。
一つは、ケモノ着ぐるみの姿で札幌市街地を舞台に写真撮影が出来ること。
ちるこんのように、顔面まで覆う着ぐるみが街中を歩けるイベントは全国的にみても限られているようです。ちるこんは道外からの参加者も多く、観光目的も兼ねた彼らにとって、旅先でもう一人の自分の姿で記念写真を残せることは、北海道旅行の良い思い出となってくれているようです。
地元民としてはこれほど嬉しいことはありません。もちろん地元のケモノ着ぐるみの方も、道外の方と一緒に記念写真を撮れることに喜んでくれているようです。
もう一つは、ちょっとマニアックな見方なのですが、一般人がサブカルチャーと接する機会が出来ていること。
ケモノ着ぐるみって、正直とてもマニアックなサブカルチャーだと思います。少し前までは、会議室の一室を借りてその空間だけで撮影するのがこの趣味では当たり前でした。地味ですよね、超アンダーグランドです(笑)。それが、人口が増えてきたことと、私自身が「外でいろいろなことをやってみたい…」と望んでいたものでしたから、ちるこんでは公共の目に触れても問題が起きないよう可能な限りの環境を整えています。
もちろん参加者の多大なる協力のおかげもあって、私たちは公共の場である程度自由に「やってみたいこと」をさせていただいています。そしてその副産物として、このようなサブカルチャーに興味がない方と接する機会が生まれました。はじめはちょっと心配だったのですが、そういう方々と一緒に仲良く写真を撮った等の報告を受けますし、私も実際そういう現場を見かけます。
これは、このサブカルチャーがそういう方々に受け入れてもらえて、お互いにwin-winな関係が築き上げられていると解釈できます。
彫刻家のイサム・ノグチのように、札幌市は元から芸術に対して協調的な側面があります。このようなサブカルチャーを芸術と捉えているかは分かりませんが・・・そんな街に住む市民を見ると、私たちを受け入れてくれるのもわかる気がします。
今年の全体感想
まず撮影に関してですが、昨年と比べ条件を相当緩和しましたが、正直かなりの不安がありました。
いくら見た目が可愛かったり格好良くても、所詮はサブカルチャー。世間から見れば 「よく分からないもの」であるのは言うまでもありません 。ですが、これという トラブルは一切発生しませんでした。
参加者一人一人がしっかりルールとマナーを守ってくれたおかげです。
ただ 、良いことばかりではありませんでした 。未だに世間を騒がすCOVID19新型コロナウイルスの影響を受け 、今年は海外の参加予定者が軒並みキャンセルとなりました。ちるこん自体も危うかったのですが、一言では語れない数々の出来事や偶然が重なり開催と判断しました 。
当日は会場にて消毒用アルコールやマスク等、出来る限りの対策を施し、それと参加者一人一人の意識と行動 、協力のおかげで無事終えることができました。
参加者や施設の方々へ、この場を借りて改めて御礼を申し上げます。
今年は波乱の開催でしたが、来年までには収束していることを祈りつつ、次回の準備を進めますので、今回機会を逃してしまった方も、ぜひ参加を検討いただけたらと思います。
着ぐるみについての考え方やこれかどうしていきたいか
とてもマニアックな趣味と感じていますが、自分だけが満足するだけでなく、自分以外の誰かを楽しませたり、幸せに出来る力を秘めていると感じます。見どころのところでも述べましたが、ちるこんでいえば一般人と触れ合う姿を見るとそれがすごく伝わりますね。
この趣味はまだ発展途上の段階で、未だにたくさんの発見があります。私の活動拠点が札幌ですので、この地でこれからもどんなことが出来るかを探求し、いろいろなことをやってみて、それが客観的にどうみえるかを探っていきたいと思います。何事もやってみなきゃ分からんの精神で(笑) 。
イベントに興味をもちました、どうしたら良いでしょうか?
残念ながら公式サイトといえるものはありませんが、もし参加を検討される場合は「ちるこん北海道 」などと調べると情報を簡単にまとめたweb ページが出てきます のでそちらを参考にしてください。次回は2021年2月27日を予定しています。
とくに参加資格はありませんので、未成年でも親御さんと相談のうえ、ぜひご検討ください。
よく受ける質問ですが、着ぐるみやカメラ機材を持っていなくても参 加できます 。
ケモノ着ぐるみが欲しいと思った場合、作りたいと思った場合は?
ここまで読んで頂いて、もし自分も気ぐるみが欲しいと思った方にティルラス様に解説して頂きました。
まず、作りたいと思ったら、インターネットで調べるのが早道です。
初心者向けに作り方の解説をしている個人のブログや画像などがありますし、Youtubeでは「 fursuit make 」などのキーワードで調べると動画もたくさんあります。
自分で作るのは難しい、完成した着ぐるみが欲しいと思った場合 、ケモノ着ぐるみ専門の業者や個人の制作者へ 委託する方法があります。
いろいろな委託先があり、デザインやテイストも様々なので、まったく分からないと思う方は、まずはイベントに参加していろいろなキャラクターを見てみる事から始めると良いかなと思います。
ただ、少々現実的なことをお話しますが、委託先によっては依頼時のコミュニケーション不足により相互の認識にズレが生じたまま制作が行われてしまったり、納品後のアフターサービスが不十分で困ったという話もよく耳にします。
形状や造形の複雑さ等の注文内容にもよりますが、 1体、30〜50万円などの価格は当たり前です。
決して安い買い物ではないので、委託を討する際は公式ページをよく読んだり、既にケモノ着ぐるみで 活動をしている方に思い切って相談してみるのも良い手でしょう。
ただ、そうとは言え、なかなかイベントに顔を出せない方のためにも委託先を1か所紹介させていただきます。
国内のクリエーター様で、最近立ち上げた「犬工房」さんは良い委託先のひとつだと考えます。
工房長とは私もよくお世話になっている方なのですが、彼自身、趣味としてケモノ着ぐるみ活動を思い切り楽しんでいるベテランなので、右も左も分からない方に対して親身に相談に乗ってくれると思います。
また彼はYou tubeを通して着ぐるみの世界を面白く紹介しているので、もし興味がありましたら「犬工房チャンネル」をご覧になってはいかがでしょう?
ケモノ着ぐるみのある生活は、とても豊かで華やかなものです。
子供だけでなく、老若男女だれでも、街ですれ違う見ず知らずの人たちを笑顔にさせる力があります。
ですが、世の中に存在しているケモノ着ぐるみはすべて、 手作り1点モノ。
些細なトラブルで自分の「好き」を失うのはとても残念なことです。
新しくこの世界に来られる方々にはそういった部分をご注意いただいて、楽しい趣味生活を送ってほしいと心から願います。
まとめ
今年はコロナの影響で、主催者の「ティルラス」や参加者様の皆様ご苦労は、今まで以上であったことだと思います。
なんとか無事に開催し、滞りなく終了いたしましたことに、「お疲れ様でした」と心よりお伝えします。
来年の開催する頃にはコロナも収束し海外の方も参加できるようになり、より楽しい「ちるこん」が開催される事を願っております。
ご興味をもって頂いた読者の方は、様子を見に行くぐらいでも参加してはいかがでしょうか?
きっと楽しい出会いがあるはず?
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