「湯元ほくよう」は昭和観光遺産?!

虎杖浜温泉は、太平洋沿いを走る国道36号沿いに宿泊施設や日帰り温泉が点在する温泉地です。
そのなかでも「湯元ほくよう」は、1966年(昭和41年)に前身となる「ホテル北陽」として創業し、1987年(昭和62年)に経営が変わりました。半世紀以上にわたり営業を続ける、虎杖浜温泉を代表する老舗の一つです。

館内には昭和の団体旅行全盛期の面影が今も色濃く残されており、長い年月を経た建物や浴場からは、当時の観光文化を感じ取ることができます。
昭和観光遺産と呼びたくなる温泉宿です。

今回は、そんな「湯元ほくよう」を訪ねました。

目次

初めて入った時、少し怖かった

初めて「湯元ほくよう」を訪れた時の第一印象は、「すごい場所に来てしまったかもしれない」です。

「美人の湯」と聞いていたので、勝手に洗練された温泉旅館を想像していました。しかし実際は、建物全体から歴史というより古さが漂います。
まだ日が高いにもかかわらず館内は薄暗く、長く入り組んだ廊下には少し不気味な雰囲気があります。悪く言えば、まるで廃墟のような独特な雰囲気です。

館内案内図を見ると、宿泊棟がいくつもあり、客室数もかなり多くあります。
昭和に旅行客が沢山いたころ、大勢の団体客を受け入れるため、増改築を重ねて現在の姿になったのでしょう。現在では使われていないように見える施設もあり、案内図に記された大ホールは、入口付近で見かけたあの廃墟なのかもしれません。

人によって評価は大きく分かれることでしょう。しかし、この独特な雰囲気を好む人にとっては、たまらない魅力を感じてしまう施設なのです。

浴場が広すぎて距離感がおかしくなる

女湯へ入った瞬間、最初に思ったのは「広すぎる」でした。

内湯からして、大浴場というより屋内プールに近い感覚です。L字型に長く伸びる浴槽は奥まで続き、天井も高いため、実際以上の広さを感じます。
しかも浴槽の途中には橋まで架かっていました。子どもの頃だったら、間違いなく潜ってくぐって遊んだでしょう。

浴場の規格外の広さは、昭和に旅行客が沢山いたころ、一度に大勢の団体客を受け入れるため、この広さが必要だったのだと思います。効率よりも、とにかく多くの宿泊客を受け入れる。当時の温泉ホテルらしいスケール感が、そのまま残されています。

内湯を堪能したあとは、噂に聞いていた大露天風呂へ向かいます。

女湯にも露天風呂はありますが、板塀に囲まれているため開放感はありません。
本来の大露天風呂へ行くには、一度服を着て別の脱衣所へ移動する必要があります。男湯は専用通路を通って裸のまま行けるそうなので、ここは少し面倒に感じました。
真夜中なら裸のままダッシュで走り抜けたくなりますが、伝説になる可能性があるので、素直に着替えましょう。

ようやく大露天風呂へ到着して、最初に思ったのは「なにこれ? 池?」でした。
湯船というより、庭園にある池のような景色です。広いだけではなく、池らしさが強く、ぱっと見では露天風呂とは思えません。しかも奥には本物の池があり、魚まで泳いでいます。

酔っ払っていたら、間違って池へ入ってしまいそうです。
しかも夜になると周囲は暗くなり、照明も控えめ。正直、お化けが出そうな空気。
この温泉には幽霊が出るという噂を耳にしたことがありますが、夜の露天風呂へ入れば、そんな話が広まるのも無理はないと思いました。
実際に気になったのは幽霊よりも、野生動物がひょっこり現れそうなことでした。

美肌と感情をほどく湯

湯元ほくようの泉質は、アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)です。一般に「美人の湯」と呼ばれる泉質で、pH8.6のアルカリ性による、ぬるりとした肌触りが特徴です。
刺激は少なく、湯当たりしにくいため、長時間ゆっくり浸かるのに向いています。

広々とした内湯には温度の異なる浴槽が用意されており、熱めの湯からぬるめの湯まで好みに合わせて入ることができます。浴槽を移りながら湯温の違いを楽しめるのも、この温泉ならではの魅力です。
また、すべての浴槽で源泉100%かけ流しとなっており、新鮮な湯が絶えず注がれています。

大露天風呂は広さだけでなく、場所によって湯温が異なるため、自分に合った場所でゆっくり浸かることができます。
浴槽は全体的に浅めの造りで、肩まで浸かるというより、ゆったり身体を預けながら長湯を楽しむのに向いています。
広い露天風呂でのんびりと湯を楽しみたい人には、満足度の高い温泉だと思います。

綺麗じゃない良さが残っている

「湯元ほくよう」は、誰にでも勧められる温泉ではありません。
けれど、こういう昭和の面影を残した温泉が好きな人なら、きっと気に入るはずです。

広すぎる浴場に、池と見間違えるような露天風呂に源泉100%かけ流しのやわらかな湯。

特に露天風呂では、泳ぎたくなっても我慢しましょう。
少し癖はありますが、それも含めて楽しめる、そんな温泉でした。

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