がっかりダム、富良野の東郷ダム

北海道は、日本で最もダムの多い都道府県です。2021年時点で189基。
そんな数あるダムの中でも、ある意味でレアな存在が富良野市の東郷ダムです。

しかしそれは、栄誉によるものではありません。
ダムマニアのワタシとして、東郷ダムを解説していきたいと思います。

目次

アースダムとしての東郷ダム

まずは基本情報から。
東郷ダムは、北海道開発局が管理するかんがい用水ダムです。主に、富良野市・中富良野町周辺の農業地帯で利用される予定でした。
ダムの形式は「アースダム」で、粘土や土を使って築かれる、最も古典的で安定性の高いダム構造です。
別名「土堰堤」や「アースフィルダム」とも呼ばれ、特に農業用ダムに多く採用されています。

本来なら、ここから農業用水が安定して供給され、豊かな田畑が広がっていた・・・・はずでした。

ダムなのに水が、貯まらない?!

東郷ダムが世に知られるようになった、最大の理由は「水漏れ」。
着工は1977年、本体工事が完了したのは1993年。しかし、完成後も水がどこからか漏れ続け、満水にすることができませんでした。
その後、200億円以上の予算を投じて改修工事が繰り返されましたが、現在に至るまで根本的な解決はできていません。

当初予定していた貯水量427万トンに対して、実際に運用可能な容量はたったの18万トン。
驚くべきことに、計画比で96%減となっています。

原因は見えない亀裂

なぜ水が漏れるのかという、最も有力な原因は、ダム本体や基礎部に発生した亀裂。
それならば、そこを補修すれば簡単簡単と思われがちだとおもいます。しかし、それがどこにあるのか、正確にはいまだ特定されていないのです。
地質の問題なのか、構造の設計ミスなのか、あるいは予想外の地下水の動きによるものなのか?
複数の調査が実施されたにもかかわらず、「どこから漏れているのかが分からない」という状態が続いています。

その結果、着工からすでに半世紀たっても、東郷ダムは未完成のままなのです。

ダムの未来はどこへ向かうのか?

このまま修復を続けるべきか、それともいっそ新しいダムを建設すべきか?
現場ではそんな議論もあるようです。しかし、新たなダム建設には莫大なコストがかかり、周辺の農業事情も時代とともに変化しています。

そもそも、「農業のかたち」そのものが変わりつつある富良野エリアにおいて、当初のような大規模な灌漑が本当に必要なのか?
そんな根本的な問いも、ダムの再生計画を曖昧にさせている要因です。

「がっかりスポット」東郷ダム

「がっかりスポット」と呼ばれる東郷ダム、見に行く価値はあるでしょうか?
何よりこのダムは“未完成”という不思議な存在。まるで、完成を拒むかのように水を貯めないその姿には、どこかミステリアスな魅力も感じさせます。

「地盤そのものがダム建設を拒んだ」ともいえ、あるいみ伝説的な存在です。
なぜ水は止まらないのか? 何を見落としたのか?
そして、50年が過ぎた今でも、なぜ撤去も解決もされないのか?

答えのないまま時を重ねる構造物には、不思議な気配が宿るものです。
技術の狭間に横たわる“未完のモニュメント”であるこのダム、マニアとしては見学する価値は十分あるのですが、現在は関係者以外は立ち入り禁止となっています。

※画像はイメージです。

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