赤平市で炭鉱遺産ツアー

赤平市——空知地方の山間にある、人口1万人を切る小さな町です。

個性的な佇まいの赤平駅を横目に根室本線に沿って自動車を走らせると、唐突に見えてくる巨大な建造物。
高さ43.8メートル、赤錆に覆われた重厚的な存在感。山間の小さな町に突然現れるので、はじめて見たときはちょっと驚きます。
この建造物は住友赤平炭鉱立坑櫓。日本遺産に登録された「炭鉄港」の構成資産の一部でもあります。

立坑櫓と併設されている赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設には、赤平市の炭鉱の資料が展示されていて、なんと立坑櫓の中に入るツアーも催されています!

■住友赤平炭鉱立坑櫓と赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設

目次

赤平市と炭鉱開発

北海道の開拓は炭鉱の開発とともに発展してきたといえます。
赤平市も1918(大正7)年に茂尻炭鉱が開坑し、以降多くの炭鉱が開発され、町も発展していきます。1938(昭和13)年には住友石炭鉱業赤平炭鉱が開かれました。
そして第二次世界大戦終戦後、国策により石炭の需要が急増。1960(昭和35)年には、赤平市の人口は59,430人となり最盛期を迎えます。
戦後復興を支えた国内石炭でしたが、徐々にエネルギーの主流が石油や外国産石炭へと変わっていきます。

そこで1963(昭和38)年、効率的かつ大量の石炭を採掘し、炭鉱の生き残りをかけて作られたのが住友赤平炭鉱立坑櫓でした。その偉容は市のシンボルとなりました。
しかし、時代の流れに抗うことはできず赤平市内の炭鉱は次々と閉山。
それに伴い、市内の人口も急減していきます。炭鉱によって発展してきた町の宿命とも言えるでしょう。
そして1994(平成6)年、住友赤平炭鉱が閉山し、市内の炭鉱はすべて閉山しました。

市民が残した炭鉱遺産

■住友赤平炭鉱立坑櫓の勇姿

北海道に住む人たちが「炭鉱」に抱くイメージはどのようなものでしょうか?
イメージは人それぞれですが、「暗い」「危険」「恐い」といったネガティブなイメージを抱く人も少なくないと思います。
自治体によっては、こういったイメージを払拭する政策を積極的に採ってきたところもあります。

また、炭鉱会社は閉山と同時に「負の遺産」となる炭鉱施設を破壊し、更地に戻しました。
そのため、炭鉱が栄えたにもかかわらず、北海道内に残る炭鉱施設は思いのほか少ないです。
しかし、住友赤平炭鉱立坑櫓は破壊を免れ、現在までその姿をほぼ遺しています。
炭鉱の生き残りをかけて技術の粋を集めた設備が残っており、しかも閉山が1994(平成6)年と比較的新しかったため状態がとても良いです。

そして特筆したいのが志のある方々が、この設備と炭鉱の記憶を後世に残そうと活動してきたことです。
立坑櫓の見学ツアーや市内を巡るフットパス、各種イベントなどを開催し、市内外の人たちに炭鉱の記憶を伝えてきました。
2018(平成30)年7月14日には、赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設がオープン。
名前の通り「炭鉱遺産」を語り継ぐ、市民活動の拠点となりました。

そして2019(令和元)年には「炭鉄港」が日本遺産に登録され、住友赤平炭鉱立坑櫓を含む周辺施設がその構成施設となりました。
取り壊されてもおかしくはなかった炭鉱施設が、有志のおかげで活動拠点ができ、未来へ遺すべき遺産として登録されたのです。

炭鉱遺産ガイド付見学に出発!

■ガイダンス施設で諸注意を受けてから、立坑櫓へ出発!

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設では、炭鉱遺産ガイド付見学に参加することができます。
炭鉱遺産ガイド付見学は、当時の姿をほぼ留めている炭鉱施設の中に入ることができるという、日本国内でも貴重な見学ツアーとなっています。
(先にも述べたように、多くの施設は取り壊されており、残っている施設も危険なため立入禁止になっています)

■まずはヤードへ。かつては、ここから人や石炭が日夜休みなく、地下650メートルまで上り下りしていました。

人車やケージなど、実際に手で触れたり乗ってみることも可能です。

■人車に乗ることも可能。想像以上に狭いです。

2階の巻上機のある部屋にも入れます。

■人の背丈よりも大きな巻上機。かつては屋外のシーブ(滑車)とワイヤロープでつながっていました。

■操作室。中央のメモリは地下1,100メートルまで用意されていました。

■機械が巨大だと、工具も大きいです。

本物を目の当たりにしながら、どのように炭鉱が稼働していたのか思いを巡らせることができます。
しかも、当時の赤平炭鉱に勤務していた元炭鉱マンの方によるガイド付きです。

施設のガイドはもとより、当時の炭鉱労働に関することや坑内のことなど、いろいろとお話が伺えます。
もちろん、わからないことがあったら、どんどん質問してみましょう。
(なお、炭鉱施設は空調がありません。特に冬季は暖かい服装で参加してください。また老朽化した施設なので、汚れが付いてもかまわない衣服を着用してください)

自走枠工場も見学!

立坑櫓の見学と同時に、少し離れたところにある自走枠工場の見学も行っています。
(立坑櫓の見学後、休憩を挟んで自走枠工場へ移動します)
自走枠工場では、かつて炭鉱内で使われていた機械をメンテナンスしていました。

閉山時に工場に残されていた機械が、見学できるように展示されています。
(坑内で稼働していた機械は、そのまま地下に放置されているそうです)
これらの機械も実際に手で触れることができます。

■自走枠工場に展示された自走枠とドラムカッター。

■坑内に設置されていたメタンガスの監視盤。炭鉱ではガスの検知が重要でした。

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設では、炭鉱施設に残された資料が展示されています。
ガイダンス施設内の見学、トイレなどの利用だけなら無料となっています。

■これらも実際に使われていたものです。

■2021(令和3)年1月には、炭鉱施設内で使われていた看板文字を集めた企画展「炭鉱の文字」が開催され人気を博しました。

近年、私たちを取り巻くエネルギーについて考えさせられる機会が増えました。
2018年の北海道胆振東部地震と大規模停電のことは記憶にも新しいと思います。
かつて、北海道が日本のエネルギー供給基地で、最先端の技術が投入されていたという事実。

国策によってエネルギー政策が決められ、それに翻弄された多くの人々。
かつて賑わいを見せた炭鉱の街も、今ではそれを知っている人たちもわずかになっています。
住友赤平炭鉱立坑櫓は、そんな北海道が歩んだ歴史の生き証人。
北海道の歴史を後世に語り継ぐためにも、いつまでも大切にしたい遺産です。

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設

住所地:赤平市字赤平485番地

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設Facebookページ
赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設ホームページ(赤平市サイト内)

ガイダンス施設の開館日程やガイド料金については、施設のホームページで必ずご確認ください。

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