近年大きな問題となっているクマの出没や被害。
クマには人を恐れる「よいクマ」と凶暴な「わるいクマ」がいるとされています。この本は、サブタイトルの通り、その見分け方や共存の方法を教えてくれます。
クマに関するすべてがつまった本
「よいクマ わるいクマ 見分け方から付き合い方まで」は、クマと出会ってしまったときの対処法やクマの生態まで丁寧に解説してくれる本です。まさに、クマのすべてがつまっているといってもいいでしょう。
著者は、「萱野茂二風谷アイヌ資料館」館長を務めた萱野茂さんと、「のぼりべつクマ牧場ヒグマ博物館」学芸員の前田菜穂子さんです。(萱野茂さんについては、アイヌ民話絵本などを紹介させていただいていますので、そちらもぜひご覧下さい)
実際編、応用編では、野山に行く際の心構えや準備、それでもクマに出会ってしまったらどうしたら良いのかが、実例とともにわかりやすく書かれています。
アイヌ民族の知恵編では、クマと共存してきたアイヌの人たちの精神や教育等について記されています。
その他、海外での実践など、クマについての知識を得ることができる本です。
アイヌの知恵に学ぶ
クマは本来、木の実や野草などを食べ、山の中で静かに暮らしていました。それが、人間を襲う凶暴なクマになってしまうのは、私たち人間にも責任があるようです。
野山でゴミを捨てるのはもちろん、食べ残しを埋めたとしても嗅覚の優れたクマには気づかれ、人間の食べ物の味を覚えてしまいます。料理や洗い物の汁も同じことです。
その行為は、クマを「わるいクマ」にしてしまうことだといいます。
北海道の先住民族であるアイヌの人たちは、自然を敬い、自然とともに生きてきました。クマとも上手に付き合ってきたのです。アイヌ民族の間で、クマは神さまとして大切に扱われてきました。狩猟の対象であるクマは、肉や毛皮、薬(胆嚢)をもたらしてくれるからです。
クマとの共存の方法は、子どもの頃から教えこまれます。アイヌ民族には、文字の文化がありません。生きていくうえで必要な知識は、昔話として語り継がれてきました。クマとの付き合い方も、そのようにして身についていくのだそうです。
クマを知るところから
クマと共存していくためには、クマという動物について知ることが不可欠です。
クマの生息地域から遠く離れた場所に暮らしているとしても、休日にはキャンプや登山など、自然の中に出かけて行く機会もあるでしょう。そこでの行動が、クマを「わるいクマ」にしてしまうきっかけになるとしたら…無関心のままでは、恐ろしいことを招いてしまいます。
クマとはどんな生き物なのか。この本では、クマの基礎知識からコミュニケーションの方法、危険なサインまでも細かく教えてくれます。雄大な自然の中に生きるクマたちの生き生きとした写真も添えられています。
人間の都合だけで、クマたちの世界が失われることは避けなければなりません。豊かな森がなくなり、生態系の頂点に立つクマが消えてしまえば、自然の均衡が崩れ、いずれは人間も絶えるといいます。
共に生きるための道を、私たちは早急に探らなければならないのです。
そのヒントを、この本から見つけられることでしょう。多くの人に手にとっていただきたい1冊です。
よいクマ わるいクマ 見分け方から付き合い方まで (C) 萱野茂・前田菜穂子 写真:稗田一俊 北海道新聞社


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