札幌信金OL殺人事件を考察

1990年、職場から帰宅途中の女性が姿を消し、自宅近くで遺体となって発見されました。
いつもと変わらぬ帰り道。
しかし、彼女は何者かに連れ去られ命を奪われたのです。

なぜ犯人が特定されたにも関わらず捕まらないのか、明かされる犯行動機とは。
今回は、未解決のまま時効を迎えた「札幌信金OL殺人事件」へ迫ります。

事件概要

1990年12月19日、札幌市西区西野にある札幌信用金庫（現在の北海道信用金庫）西野支店に勤務する生井宙恵さん（当時24歳）が行方不明になりました。

宙恵さんは、午後8時30分に退社。同僚と地下鉄南北線「大通駅」前で別れ、そのあと消息を絶ちます。
本来であればバスに乗り3ｋｍ離れた自宅へ帰宅するものの、この日に限って帰って来なかったのです。
翌20日午後、娘を心配した母親は警察へ捜索願を提出。
しかし3日後の12月22日、自宅から150m離れた民家の軒下で遺体となって発見されました。

彼女は雪に埋もれた状態。
首の動脈まで達する刺し傷と着衣の乱れから、帰宅途中にわいせつ行為目的で襲われ、抵抗したことで殺害されたのでしょう。
現場周辺に落ちていた宙恵さんのバッグから預金通帳が発見され、そこから近くに住む無職、長田良二（当時22歳）の指紋も検出されました。

容疑者の男

彼は同じ高校の卒業生で2年後輩。
なんと宙恵さんの失踪と同時に、姿を消していたのです。
さらに家宅捜査したところ、母親と恋人へ「大変なことをしてしまった。逃げる」と書かれたメモが見つかり、全国に指名手配されました。

逮捕へつながる有力情報に200万円の懸賞金もかけられましたが、依然として行方を掴めません。
そして2005年12月19日に時効成立。
そのあと遺族は民事訴訟を起こして勝訴するも、長田の足取りを追えず賠償金7,497万円は支払われない状態です。

彼はどこへ消えたのか

長田には、逃亡を手助けする家族や友人も存在しません。
小学校時代に彼の同級生だった男性は、「自宅は西区内の貧しい家庭」「兄弟が多い」「1番上の姉が母親代わり」と証言。

これらの情報を踏まえると、仮に北海道を出たとしても逃走資金を持っておらず空路ではないと思われます。
だとすれば航路しか存在しません。
その場合は電車で30ｋｍ先の小樽港へ向かい、京都府舞鶴市もしくは新潟県へ移動した。

または苫小牧港から、青森県八戸市や宮城県仙台市。
函館港から、青森県青森市や大澗町あたりが候補になります。
ただし、船を利用すれば噂もあがるはず。
有力な情報がないことを踏まえると、北海道から出ていないのではないでしょうか。

現金を自宅へ取りに戻ったとしても、長田の家には逃走資金となるお金がありません。つまり遠くまで逃亡することは不可能。

逮捕されない理由

では、なぜ捕まらないのか。
それは・・・、もうこの世に存在していないからかもしれません。

例え時効が成立しても、犯人の顔は至るところに公表されています。そのため生きていれば、どこかで目撃されているでしょう。ましてやこれだけデジタル化が進んだ現代、よほどうまく逃走しなければ記録に残される。

誰の目にも触れないのは、長田が亡くなっているからです。
事故あるいは自殺。
ただし、交通事故であれば身元判明の可能性も高いため、遺体があがらない理由は3つに絞られるでしょう。

考察1【自然災害に巻き込まれた】

台風や地震の行方不明者も多く、その中に含まれていたと考えられます。
1991年、渡島半島へ再上陸した台風19号による被害で、62人の行方不明者を確認。
1993年、北海道南西沖地震では、28人の行方不明者が存在しました。
この付近で生活していたとすれば、巻き込まれたことも否定できません。

考察2【海への転落や山からの滑落】

人目を忍んで逃走するとすれば、海や山など自然の多い場所へ向かいます。
そこで誤って転落、もしくは滑落事故を起こした。
しかし、人を避けて逃げており、誰にも発見されずそのまま朽ちたかもしれません。

考察3【覚悟の自殺】

長田は、宙恵さんを手にかけた罪悪感から自殺を選んだりはしないでしょう。
けれど、「もう逃げられない」「捕まるくらいなら命を絶とう」という心境に陥った。
現実に追い詰められた結果、逮捕を免れるために自殺したのです。

もちろんこれらの仮説は、あくまでも現状から導き出した推論。
真相は違っているかもしれません。ですが、事件発生から33年以上経っても消息不明。
まったく手がかりを得られないので、既に命はないと結論付けたほうが合理的です。

なお「兵庫県神戸市東灘区で見かけた」という噂もありますが、これが事実だとすれば、それこそ阪神・淡路大震災で命を落としたのではないでしょうか。

なぜ彼女を殺害したのか

同じ高校だったとはいえ、2人に面識があったかどうかわかりません。
ただし、宙恵さんは知らなくも、彼が一方的に憧れていた可能性はあります。
そのため最初から彼女の命を狙ったわけではなく、自分の気持ちを受け入れて欲しいと迫ったのではないでしょうか。そして欲望を果たそうとして騒がれ、脅す目的で持っていたナイフを使って思わず刺したのかもしれません。

「恋人がいたなら狙わないのでは？」という声もありますが、メディアが女性の存在を伝えただけ。

本当に存在したかどうか裏付けはとれておらず、噂レベルの情報とも言えます。
いずれにしても長田は宙恵さんを欲望の対象とし、衝動を抑えられなかったのでしょう。

事件の顛末

民法の規定では、確定した判決の権利として10年の時効があります。
そのため遺族は2007年に勝訴したあと、2017年に再び提訴。賠償請求権を消滅させないために、裁判を起こしました。
このまま彼が発見されなければ、2027年に3度目の訴訟を起こすでしょう。

ただし、裁判にかかる費用は遺族持ち。
賠償金が欲しくて訴訟を起こすわけではなく、すべては長田を見つける手段の1つです。
しかし、彼の行方は誰にもわからず、悔しさと憤りが生まれるかもしれません。

※画像はイメージです。