これは父親から聞いた、道南の観光スポットとして有名な、「大沼(おおぬま)」周辺のドライブコースで起きた事故にまつわる、まだスマホや携帯が普及していない昭和の頃の話です。
観光地になっている「大沼」はその周辺がドライブコースの定番になっていて、世代を問わず人気のスポットになっています。
しかし市街地から離れている場所のせいか深夜になると、いわゆる「公道レース」に使われたり違法改造した車やバイクの定番コースにも使われていました。
そんなドライブコースの道沿いに住んでいるAさん(仮名)は、深夜ドライブの騒音に迷惑しつつ生活していました。
そんなある日、いつものように深夜ドライブの音を聞きながら「今日も走ってるのか・・・」と布団に入りながら溜息をついていると、「ガシャーン」と事故のような音がすぐ近くから聞こえてきました。
事故か、これは近いな・・・とAさんは布団から起きだし、「この辺りは人通りも少ないし、様子を見てきたほうがいいかな」と着替えはじめると、「ピンポーン」と家のインターホンが鳴り響きます。
「電話でも借りにきたかな?」と思いドアを開けると、そこには頭から血を流した青年が立っていて「すいません、事故を起こしてしまったので電話を借りたいのですが・・・」と言ってきました。
Aさんは青年を見て一瞬驚きましたが、すぐに我に返り玄関脇にある電話を指さしながら「ここにあるから使っていいよ」と返事をして、「怪我してるじゃないか、ちょっと待ってなさい」と言いながら救急箱を取りに部屋の奥に入っていきました。
救急箱を持ってAさんが玄関に戻ると、青年は居なくなっていました。
「電話が終わったので出ていったのかな」とAさんは特に不思議に思うこともなく、その日は布団に戻り眠りました。
ところが次の日、Aさんが寝ているとまた「ガシャーン」という事故のような音が聞こえてきます。
その音で目が覚めてしまい「今日も事故が起きたのか・・・」と思っていると、また「ピンポーン」とインターホンが鳴り響きます。
そしてドアを開けると、昨日の血まみれの青年がまた立っています。
怖くなって、ドアを締めると一目散に布団に潜り込みます。
そして、その次の日も、そのまた次の日も「ガシャーン」という音と「ピンポーン」いう音、そして同じ青年が立っているという事が続きました。
「これはさすがに普通じゃない」と思ったAさんは、この日から深夜に「ピンポーン」とインターホン鳴っても返事をせずに静かになるのを待っていました。
すると「ピンポーン」、「ピンポーン」、「ピンポーン」インターホンが鳴り続けます。
このままではたまらないと思ったAさんは、昼間のうちに辺りを調べたり、近所の人や警察にも聞いてみたのですが、事故が起こったという事はないそうです。
Aさんはどうする事もできず、夜中は布団をかぶりながら「帰ってくれ」、「もう来ないでくれ」と祈りながら朝になるのを待つしかなく、それから3日ほどするとようやく、深夜に「ピンポーン」とインターホンが鳴らなったそうです。
結局、どうしてこうなったのか、全く理由がわからず後味の悪い話です。
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