“山の妖精”と呼ばれている北海道のエゾオコジョについてお伝えします。エゾオコジョの分布や生態、すこし意外な特徴について。また、エゾオコジョがおかれている現状についてもご紹介できたらと思います。
山の妖精 エゾオコジョとは?
北海道に生息している山の妖精、エゾオコジョは、イタチ科に属するイタチの仲間です。そのため、別名「蝦夷鼬(エゾイタチ)」と呼ばれています。さっそくかれらの分布や生態を見ていきましょう。
分布
エゾオコジョは、北海道の山岳地帯に生息しています。じつは、1930年頃までは平野部にもエゾオコジョの生息は確認されていました。しかし、個体数が減少したため、現在では山岳部のみとされています。
寿命
エゾオコジョの平均寿命は意外にも短く、野生下では約2年とされています。ただし、飼育下のエゾオコジョでは10年生きた個体もいます。
大きさ
エゾオコジョはオスとメスでからだの大きさが異なります。
オス
体長:約24センチ
尻尾の長さ:約7~9センチ
メス
体長:約22センチ
尻尾の長さ:約7センチ
このようにエゾオコジョはオスのほうが、メスよりもからだが大きい個体が多いです。
生態
エゾオコジョは冬眠をしない動物です。一年を通して活発に動きまわる姿が確認されています。活動時間は昼夜を問わず、繁殖期のほかは基本的に単独で行動します。
エゾオコジョは、穴やその隙間を利用して巣をつくります。主食はエゾシマリスやナキウサギといった小型の動物です。また、エゾオコジョの繁殖期は5〜6月にかけて。出産は翌年の4〜5月にかけておこなわれます。
エゾオコジョは暴れん坊?エゾオコジョの気性
全身まっしろな被毛に、うるうるの瞳、いかにも山の妖精といったオコジョですが、じつはその気性は意外にも荒いことで知られています。
エゾオコジョは縄張り意識が高く、ほかの動物にたいして警戒心が強い傾向にあります。そのため、人間などが近づくと威嚇をしたり、攻撃的になることが多いです。さらに、エゾオコジョは狩り能力にもすぐれていて、獲物を捕らえる際は俊敏に動きます。また、かれらは牙だけでなく、爪を使って攻撃をします。
自分のからだよりも大きなウサギやライチョウを狩ることがあるというのだから、驚きですね。
その可憐な見た目からエゾオコジョをペットにしたいと考えているひともいるかと思いますが、エゾオコジョをペットとして飼育することはできません。
エゾオコジョの衣替え
おそらく多くの方が「ふわふわで、まっしろい毛に覆われたオコジョ」をイメージしているのではないでしょうか?
じつは、白いエゾオコジョは冬限定です。エゾオコジョの毛は夏と冬でかなり異なります。夏毛は茶色をしているのに対し、冬毛は白い色をしています(しっぽの先だけは黒色)。これは保護色といって雪など冬の景色と同じ色をして溶けこみ、天敵から身を隠し、守るためのものです。
腹部に関しては、季節を問わず、白色をしています。
こうしたエゾオコジョの換毛期(衣替え)は10〜11月にかけておこなわれます。この時期に換毛することで、エゾオコジョは北海道のきびしい冬を乗り切っているのです。
夏毛
- 全体的に茶色をしている(腹部除く)
- 硬めの毛質
- 密度が低く、通気性にすぐれている
冬毛
- 全体的に白色をしている(しっぽの先を除く)
- ふわふわとして柔らかい毛質
- 密度が高く、保湿性がある
エゾオコジョは準絶滅危惧種
現在、エゾオコジョは準絶滅危惧に指定されています。エゾオコジョ減少の主な要因は、ミンクなど外来種によるもの、森林伐採など開発によるもの、平野部での乱獲(~1930年)とされ、これらが原因でエゾオコジョの個体数は減少傾向にあります。
また、エゾオコジョの被毛(とくに冬毛)は珍重されており、高価な取引がされています。
日本でもかつて毛皮ブームがおこった時期があります。その際に生産量をまかなおうと移入した動物が外来種に指定されている「ミンク」です。
移入されたミンクの一部が野生化し、やがて、エゾオコジョの餌は減少してしまいます。さらに、開発による森林伐採の影響を受けたエゾオコジョはしだいに生活圏を失ってしまいます。
エゾオコジョとホンドオコジョの違い
エゾオコジョと、ホンドオコジョはいずれもイタチの仲間に分類される小型の哺乳類です。では、かれらの違いはどこにあるのでしょうか?
いくつか違いをまとめてみます。
からだのサイズ
エゾオコジョは、ホンドオコジョにくらべて、ひと回りほどからだが大きいのが特徴です。
具体的には以下のとおりです。
エゾオコジョ:約22~25センチ
ホンドオコジョ:約14~20センチ
※いずれも成獣時の体長です。
生息地
エゾオコジョが北海道に生息しているのにたいし、ホンドオコジョは本州中部から東北地方にかけて生息しています。
いかがでしたでしょうか?
今回は、北海道の山の妖精、エゾオコジョをご紹介しました。
かわいらしい容姿をしたエゾオコジョはまさに山の妖精です。とくに冬毛のエゾオコジョは想像以上の愛くるしさでマスコット等としても人気を博しています。
残念ながら、エゾオコジョは準絶滅危惧に指定されていることもあり、動物園などの施設でかれらを見ることはできません。ですが、大雪山国立公園で野生のエゾオコジョの目撃情報があります。
とはいえ、エゾオコジョに出会うことはなかなか容易でないのが現状です。また、運よくエゾオコジョに出会えたとしても、むやみに近づいたり、驚かせたりしないようしずかに観察するようにしましょう。
※画像はイメージです。
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