中標津の思い出


もう10年以上前になりますが、北海道にボラバイトに行った体験記です。

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北海道へ

ハードワークで身体を壊し、仕事を辞めることになった。
同じタイミングで、当時お付き合いしていた方ともお別れをして「あ、全部なくなったわ」と思った。
空っぽになって一人暮らしの部屋を引き払って、実家も居心地が悪い。
さてどうしようか・・・と思った時、北海道にでも行ってみるか!
思いつきで住み込みのバイトを探し、行き着いたのが中標津だった。

そもそも北海道へは、遠い親戚が函館に住んでいて一度訪れたのと、仕事で札幌に行ったぐらい。
「中標津」という街もバイトが決まってから初めて知った。
北海道が幾つかのエリアに分かれており、中標津は「道東」と呼ばれることも初めて知った。

何の前情報もなく、未踏の地へ

人よりも動物が多い町で

中標津は酪農を営んでいる人が多く、冬はスノーダストが見れるくらい凍て付く土地。
わたしが訪れたのは6月だったけれど、夜は長袖にパーカーでは寒くて寝られないくらいだった。

空の青と芝の緑しかないような場所で、徒歩15分の距離にコンビニはあるものの、24時間営業ではない。
一番近い街まで車で15分くらい掛かり、車がなければ生活がままならない。
そして街まで向かう道すがら、キツネやシカに出会う・・・そんな場所だった。

中標津での生活は、ほとんどが寝食と乳搾り。
朝まだ暗いうちに起き出して、乳を搾り、昼に一度下宿先に戻って、夕方また、乳を絞る。

わたしが行った当初のバイト先は、まだ一頭一頭に搾乳機を掛けて乳を絞るスタイル。
筒状の搾乳機が6台、ひとりでタイミングを見て、何十頭もの牛全てに掛けていく。
一頭につき8本、搾乳機が来る前に素早く、一頭一頭の乳首を綺麗に拭く必要があった。

普段使わない筋肉をたくさん使い、中でも手のひらがかつてない労働を請われ、最初の2週間くらいで腱鞘炎みたいになって、痛くて眠れない。
そして、運動量が食べるカロリーを上回り、ぽっちゃりのわたしはスルスルと痩せて健康的な身体になった。

休みの日は

週に1日のお休みには、決まってと言っていいほど、車で30分くらいかかるジェラート屋さんに行った。
ここが一番近くて、ユイツ休みを楽しめる場所。

ジェラートはコクのあるミルク、だけど重たくない、しつこくない。
わたしはかぼちゃが一番好き、素朴なかぼちゃの甘みが、さっぱりとしたミルクによく合っていた。

ここは丘の上にあって見晴らしがよく、昼間は近くの農場の牛たちを眺め、夜には星が綺麗で少し気持ち悪いくらいの数。「流星群がくるよ」と教えてもらった夜、バイト仲間と車を走らせ見に行って、満足いく以上の流れ星が見れた。
夏だったけれど、半袖に上着を着ていても肌寒かったのをよく覚えている。

月に一度は連休がもらえ、そんな時は少し遠くまで足を伸ばす。
1時間半くらい車を走らせ、名物のさんま寿司を食べて、釧路湿原を散策した。
湿原は中標津の草原に比べて背の高い木々が多く、木漏れ日が気持ちよかった。生態系も違っていて、野生のカワウソを初めて見た。
警戒心が強くて動きが素早く、写真に収められなかったので、もしかしたら幻かも?と思ってしまうくらい、わたしには現実離れした体験だった。

自然に浸りたいなら中標津においで

中標津は特別な観光地もなく、ただ、本当に雄大な自然がある。
街から離れれば人も車もほとんどいない。ただ広い広い大地が続いていて、時折動物たちの気配がする。
特別何かをした訳ではないけれど、あの時の空気感を長い時間が経った今でも思い出す。

その広さ、開放感、澄んだ感じ。
今、こうして文章を書きながらあの感覚を思い出して、また時間ができたら、ふらりと立ち寄りたいなあと思う。
自然の淡い優しい色合いに包まれたい人には、ぜひ訪れて欲しい土地。

※画像はイメージです。

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