北海道室蘭市崎守町に広がるのどかな草原。中央に1本のエゾヤマザクラがたたずんでいる。室蘭の隠れた観光スポット「一本桜」だ。風車をバックとした雰囲気が映えるため、インターネット上で話題に。見ごろの春には、カメラを携えた観光客が、市内外から来蘭し、ベストショットを狙う。映画やコマ-シャル・メッセージ(CM)、プロモーションビデオ(PV)のロケ地にも使用された。関係者はこれらを好機ととらえ、保存活動を展開。まちの活性化を期待している。
広い草原にぽつんと
広がる青空・・・満開を迎えたサクラの下で物思いにふける女性―(映画「モルエラニの霧の中」よりシ-ンを引用)。
高さ10メ-トルほどの「一本桜」が、いつから人々の間で話題になったのか示す明確な史料はない。ただ、樹齢は100歳を超えており、市民の間で隠れた観光スポットとして認知されていたようだ。
近年、一本桜の話題の火付け役となったのが、2021年公開のオ-ル室蘭ロケ映画「モルエラニの霧の中」(坪川拓史監督)である。全7章で構成される同映画の「春の章 名残の花」。思い入れのある桜を見上げる女優香川京子さんの姿が、ポスターに起用されるなどし話題となった。
ただ、〝100歳〟を超える老木のため、木の枝が折れやすくなるなどの問題が発生。そこで映画作成を支えた市民団体が立ち上がり、治療に乗り出した。参加者らから寄せられた枯れ葉などを敷き詰め、保存を図った。
風車背景にベストショットを
室蘭の一本桜は、高速道路のインターチェンジ(IC)近くにあり、高いフェンスで覆われているため見落としがちだ。基準となるのは、東日本最大のつり橋「白鳥大橋」。市街地にぬける山道を進む。案内看板はなく、地元民である筆者ですら素通りしてしまう。満開の春に行くならば、フェンス越しにベストショットを狙う「カメラマン」が、一番の目印になるであろう。
筆者もマイカメラを持参して撮影に挑んでいる。背景には、室蘭岳や発電用の風車が並んでいる。これらを入れれば、構図に困らない。ただ、一本桜がたたずむ草原は私有地だ。フェンス内に立ち入ることはできず、距離感は課題である。スマ-トフォンでは、ズ-ムを最大にしても画像が荒くなってしまう。美しく撮ろうとするならば、フェンスからレンズを突き出させること。一眼カメラや望遠レンズは必須である。
実はサクラのまち?室蘭
大手製鉄の事業所が並ぶ「てつのまち」として知られる室蘭。崎守町の一本桜以外にもサクラの観光スポットが多彩だ。その一部を紹介する。
幌萌町の一本桜
閑静な住宅街に佇む樹齢180年のエゾヤマザクラ。道は入り組んでおり、交通の便は良くないが、満開時は圧巻だ。ライトアップされた木の下でコンサートを行った。地元のピアノ演奏家もいる。
母恋富士下サクラ並木
地域の人たちが育てる約130本がトンネル状に並ぶ。種類は29種類に及び、母恋富士(標高156メ-トル)の麓にあるため、満開時に弁当を持参し、ピクニック気分で出かけるのも良いであろう。
室蘭八幡宮のソメイヨシノ
室蘭八幡宮境内で咲くソメイヨシノ。室蘭地方気象台が、この地域におけるサクラの開花を発表する標本木となっている。
まとめ
一本桜を銘打った観光スポットは、全国に複数ある。ただ、室蘭のように映画やCMのロケ地として使われたスポットは数少ない。「モルエラニの霧の中」はご当地映画とはいえ、東京でも上映されている。
「聖地巡礼」に訪れるファンもおり、他にない強みであろう。満開の春までもうすぐ。一本桜を草原に突っ立つ「あんぽんたんの木」(室蘭の隠れた別名物)にしないため、観光客を呼び込む市や関係者のPR活動は必須である。
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