トライアスロンにはいくつかの距離区分があり、水泳3.8km・自転車180km・マラソン42.195kmを一日で行うフルディスタンスは、運営負荷や制限時間の問題から、世界的にも限られた大会でのみ実施されています。
この距離を固定規格として展開している大会が「アイアンマン」であり、日本では2001年から2009年まで、長崎県五島列島を舞台に開催されていました。
2010年大会は口蹄疫の影響により中止となり、その後ライセンス更新が行われなかったため、日本国内での開催は一度途絶えることとなります。
その後、2013年に開催地を北海道の洞爺湖周辺へ移し、アイアンマン・ジャパンとして再開されたのですが、バイクコースの安全確保など運営上の問題から、2015年を最後に再び開催が見送られた。
そして2024年、函館市近郊を舞台とする「IRONMAN Japan South Hokkaido」として、約9年ぶりに日本でフルディスタンスのアイアンマンが復活することになります。
私が参戦した2015年大会の体験をもとに、当時の北海道開催の独自性と魅力について触れていきたい。
8月下旬のレース
開催は8月下旬でしたが、新千歳空港に降り立つと、少し肌寒さを感じるほどの冷たい風が吹いていました。
日によっては半袖で過ごせる気候ではありましたが、レース当日は次第に雲が広がり、長袖を着用して走る選手も少なくないコンディションとなりました。
このレースの大きな特徴のひとつが、透明度バツグンの洞爺湖を舞台としたスイムと、市街地を抜けてニセコの山を越え、再び洞爺湖へ戻るワンウェイ形式のバイクコースです。
洞爺湖は通常、遊泳が厳しく制限されている湖であり、大会期間以外に無断で湖に入る行為は禁止されています。
本大会に限り、選手は正式に洞爺湖を泳ぐことが許可されていました。
洞爺湖は非常に透明度が高く、泳いでいる最中に湖底が視界に入るため、深さを直感的に感じてしまい、恐怖感を覚える選手もいたといいます。
湖でのスイムは海水と比べて浮力が小さく、泳力そのものが結果に反映されやすい環境でした。また、水深や湖底の地形条件により、コースブイの設営にも制約が多く、運営側にとって難易度の高いセッティングであったとされています。ただし、この距離に挑戦する選手はいずれも十分なフィジカルを備えており、スイムパートで大きく脱落する例は多くありませんでした。
大会を象徴するバイクパート
この大会を象徴するのがバイクパートです。180kmという長距離でありながら、周回ではなくワンウェイ形式のコースが採用されていました。市街地を抜け、視界を遮るもののない直線道路を進み、ニセコ方面へ向かう構成は、北海道という土地のスケールをそのまま体感できる内容でした。
このコースには、ニセコの山岳地帯を越えるヒルクライム区間が含まれていました。レース開催数か月前、当初予定されていたルート上の橋梁が崩落し、急遽コース変更が行われた結果、山岳要素の強いレイアウトとなった経緯があります。制限時間の延長などの特別措置は設けられず、完走難度の高いレースであることに変わりはありませんでした。
冬季にはスキーで賑わうであろう山岳地帯を越え、再び洞爺湖へ戻り、最後のフルマラソンへと移行します。
ランからゴールへ
ランは洞爺湖畔を2往復半する構成でした。
時間の経過とともに周囲は完全な暗闇に包まれていき、湖畔の静けさが際立ち不安になってきます。その中で、設置されたエイドステーションが、選手に人の気配と安心感を与えてくれました。
洞爺湖では、夏季に湖上花火が長期間実施されています。打ち上げ会場だけでなく、コース上の複数地点から花火の光と音が届き、夜の湖畔に響き渡ります。その環境の中で約15時間に及ぶ行程を経て、洞爺湖万世閣ホテル前に設けられたゴール地点へと辿り着きました。
レッドカーペットを踏み、ゴールテープを切った瞬間、長い一日は終わりを迎えました。
トライアスロンの参加は決して一般的なものではありません。
しかし、洞爺湖の透明な水、果てしなく続く道路、夜空に響く花火の音がこの文章から想像できたのであれば、それらの風景はすべて実在するもので、貴方を読んでいるのかもしれません。
雄大な自然と貴方の筋肉は決して裏切ることはありませんので、今からトレーニングを初めて参加してみませんか?


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