北海道の冬は厳しい。真っ白な雪がすべてを覆い、寒さも容赦がありません。
その極端な環境だからこそ成立している生態系があります。釧路湿原周辺で生活するタンチョウが代表例です。
「(公財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」は、野生のタンチョウ鶴を間近で観察できる貴重なスポットに訪れてました。
冬の湿地に集まるタンチョウ
訪れたのは1月上旬。冬真っ盛りの鶴居村は、視界の大半が白で埋まっていました。
到着してすぐタンチョウを見たくて観察場へ向かいましたが、最初に目に入ったのは鶴ではありませんでした。
柵の前には、明らかに存在感のある大型カメラを構えた中高年の男性たちがびっしりと並び、視界を塞いでいたのです。
私は子どもと一緒にこのサンクチュアリを訪れましたが、想像していた「静かな湿原で鶴を眺める光景」とはだいぶ違っていました。
子どもも状況をうまく理解できない様子で、少し戸惑っているように見えました。
邪魔にならないよう、空いている場所からそっと平原を覗き込むと、ようやく鶴の姿が見えてきました。
多くのタンチョウが地面をつついて餌を探し、時折、静かに飛び立っていきます。その様子を遠くから眺める形になりました。
正直に言えば、「優雅に舞う鶴に圧倒された」という印象ではありません。
意外と地味だな、というのが素直な感想でした。
確かに翼を広げた瞬間の大きさにははっとさせられましたが、赤い頭頂部も想像していたほど目を引くものではありませんでした。
だんだんと子どもが寒さに耐えられなくなり、私たちはネイチャーセンターへ向かうことにしたのです。
鶴とタンチョウサンクチュアリ
タンチョウ鶴は北海道東部の限られた地域に生息する日本の国鳥で、翼を広げるとおよそ2メートル前後にもなる日本最大級の鳥です。
白い羽毛と頭頂部の赤色が特徴として知られていますが、実際に見ると、写真で想像していたほど強いコントラストを感じるわけではありませんでした。
「丹頂」という名前は、「丹」が赤、「頂」がてっぺんを意味し、頭の頂にある赤い部分に由来しています。この部分には羽毛がなく、皮膚が露出しているため、光の当たり方や個体の状態によって色味の印象が変わります。
タンチョウはつがいで行動することが多く、共同で子育てを行う鳥として知られていますが、一夫一妻という繁殖形態自体は鳥類では特別珍しいものではありません。
特徴的なのは、長期的につがい関係を維持する傾向が強い点にあります。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリは、こうしたタンチョウの保護と生息環境の維持を目的として設けられた施設です。
冬の北海道は野生動物にとって非常に厳しい環境であるため、越冬期に限って補助的な給餌が行われています。これは自然を管理し過ぎるためのものではなく、個体の安定や人里への分散リスクを抑えるための現実的な対応です。
湿地の保全や観察距離の確保など、人間側の行動を制御する仕組みも含めて、この場所は成り立っています。
私が訪れた1月上旬の昼間は、越冬期にあたり、見られた行動の多くは採餌や移動が中心です。
一般に知られている、羽を広げて跳ねるような求愛行動は繁殖期に見られるもので、冬の終わりから春先にかけてが主な時期とされています。1月にそれを期待するのは現実的ではありません。
今回は静かな採餌の風景を遠くから眺める形になりましたが、次に訪れる機会があれば、季節を変え、繁殖期の行動も含めて観察してみたいと思いました。


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