世界最小の肉食獣!レアな“イイズナ”に北海道で会おう?!

この記事では北海道で会うことができる世界最小の肉食獣「イイズナ」についてご紹介します。北海道にはイタチ科の動物がたくさんいますが、その中でもとくにレアな存在とされているイイズナの生態や形態、分布、また北海道でイイズナに会えるスポットなどをお伝えします。

目次

北海道とイタチ

北海道にはイタチ科の動物が多く生息しています。エゾクロテンやオコジョ、ニホンテン、アメリカミンクなど非常にたくさんのイタチの仲間たちが暮らしています。

エゾクロテン

本州にいるテンとは異なり、黒っぽい被毛を持つエゾクロテン。国内では北海道のみに生息しているイタチ科の動物です。体長は40〜50センチ、体重は1・5キロ前後とイタチの仲間のなかでも大きなからだをしています。
かれらは木登りが得意で主にリスやネズミ、ウサギ、カエル、昆虫、小魚などの動物を捕食する優秀なハンターです。そんなエゾクロテンには知られざる悲しい歴史があります。

ミンク

エゾクロテンのつぎに大きなからだをしているのが、ミンク。
かれらは北アメリカ原産のイタチの仲間で、主に明治のころから毛皮用に輸入されはじめました。泳ぎがとても上手なミンク。現在北海道に生息しているミンクたちは当時、飼育所を逃げだして野生種と交配した雑種といわれています。

オコジョ

まっ白毛にクリクリの瞳といった可憐な容姿をオコジョ。体長は約16〜33センチと、他のイタチ科の仲間と比べてからだは小さめです。みなさんがよく知っているまっ白な姿は冬毛といって、夏には茶色っぽい毛に変わります。
これほどちいさなからだをしていながら北海道の厳しい冬を乗り切るオコジョたち。気性は少し荒いといわれています。縄張り意識や警戒心が強く、するどい牙や爪を使って獲物をつかまえます。

ニホンイタチ

ニホンイタチが北海道にやってきたのは今から約100年前。そのルートははっきりしていないですが、本州から渡ってきたといわれています。茶褐色のニホンイタチの体長は約30センチ、体重は1キロほどです。かれらはオコジョとの生息環境がほとんど同じだったため、からだのちいさいオコジョを河川周辺の生息地から追いやってしまった、という説もあります。

多にお目にかかれない希少動物イイズナ

さて、ここまで北海道で暮らすイタチの仲間について触れてきました。ここからは本日の主役、世界最小の肉食獣の呼び名を持つイイズナについてお話させていただきます。
北海道でも滅多に会うことのできない希少なイイズナ。かれらはいったいどんな動物なのでしょうか。

イイズナはイタチ科に属するイタチの仲間で、世界最小の肉食目動物といわれています。ちなみにイイズナを英訳すると《least=最もちいさい》です。

形態

イイズナは狩りをする動物であるにもかかわらず、その体長は頭胴長約14〜26センチ、しっぽの長さ1.6〜3.5センチ。体重はわずか80〜180グラムほどのちいさな動物です。これはペットとして人気のゴールデンハムスターの体重とあまり変わりません。
(※ゴールデンハムスターの平均体重は約80〜150グラムです。)

にもかかわらず、かれらは自分よりもあきらかに大きなからだの動物を捕食します。その多くがネズミやウサギなどのげっ歯類です。
イイズナは年に2回、換毛をおこないます。夏毛は茶褐色をしており、冬になると全身がまっ白な被毛で覆われます。

生態

見た目はとても可愛らしいイイズナですが、ほかのイタチの仲間と同じく気性は荒いとされています。ジャンプが得意で動きが素早いです。

森林、原野、田畑などに生息し、げっ歯類や小鳥、昆虫、両生類などを食べます。イイズナはからだがちいさいため、丸1日食べないだけでも生命が危険にさらされます。そのためかれらは優れた嗅覚や視覚を駆使して、昼夜問わずに獲物を探して活動します。

ほかのイタチの仲間と同様に木登りや泳ぎも得意ですが、狩りのほとんどは地上でおこないます。

繁殖

イイズナの繁殖期は2〜10月、交尾は3〜6月におこなわれます。出産は年に一度、妊娠期間は約35日で個体差やエサの量にもよりますが一度の出産で1〜13頭ほどの赤ちゃんを産みます。イイズナの赤ちゃんは生まれてから約7週間ごろから自分で狩りができるようになります。

(近年では都市部の拡大などにより、イイズナの繁殖地は減少傾向にあります)

分布

イイズナは北半球に生息しており、日本では主に北海道で見ることができます。
イイズナの天敵は主に大型の鳥類やキツネなど。イイズナは夏になると茶褐色、冬は白色と毛の色を変化させることで環境に馴染み、捕食者から身を守っています。

寿命

イイズナの寿命は野生化で2〜4年といわれています。

亜種

北海道に生息するイイズナの亜種として、青森県、岩手県、秋田県に分布している「ニホンイイズナ」や同じ北海道内に分布している「キタイイズナ」がいます。

また、青森県に生息するニホンイイズナと北海道に生息するキタイイズナとでは染色体の構造が異なることが知られています。

アイヌ語

エゾイタチはアイヌ語で「ウパㇱ・チロンヌㇷ゚」もしくは、「サチリ」と呼ばれています。イイズナもまた「ポイ・サチリ・カムイ」と呼ばれていたとされています。「ポイ」は”ちいさい”の意味でイイズナ(コエゾイタチ)を指しているのだろうと推論されています。

世界最小の肉食目動物

イイズナの亜種である「キタイイズナ」は北海道に生息する世界最小の肉食目動物。北海道の沿岸部から平野、高山体にいたるまで広く分布しています。キタイイズナはちいさくて細身なため、ネズミの巣穴などに侵入して狩りをおこなうことも多いです。

また、キタイイズナはオスとメスでは、からだの大きさが異なり、オスのほうが大きいです。そんなオスですら体重はわずか100グラムほど。体長も約18センチとゴールデンハムスターよりちいさい個体もいます(メスの体重は50グラムほどしかありません)。

ちいさくて可愛らしい表情とは裏腹にかなりどう猛な面があり、侮れない最小ハンターとして知られているイイズナ。自分よりもずっと大きなからだのウサギやその他げっ歯類をつかまえて食べることも…。かれらは狩りの際に自らのからだをねじらせたり、ジャンプをしたりとダンスをすることがあります。これは敵を混乱させるための手段のひとつといわれています。しかしその真相はいまだにわかっていません。

また、イイズナは繫殖期のほかは基本的に単独で行動をしています。巣穴には木の洞のほかにネズミが掘った穴を利用することもあります。ちなみにイイズナ自身が穴を掘ることはありません。

秋になると褐色部に白い差し毛があらわれはじめ、やがてごま塩状の模様になり、最終的に白い冬毛に変わります。

イイズナは伝説の生きもの?

東北地方や信州地方では、特定の家系が「飯綱(いづな)使い」や「狐持ち」と呼ばれ、管狐を使いこなすとくべつな能力を持っていると信じられていました。
管狐(くだぎつね)とは、竹筒のなかで飼われ飼い主の命で特定の人物を呪い殺したり、予言をしたりする想像上のちいさなキツネのことをいいます。

イイズナは伝説の生きものとされることがありました。しかし、イイズナは現実の生きものであり、決して伝説の生きものではありません。

北海道でイイズナに会う

ここでは北海道でイイズナに会うためのスポットをご紹介します・・・と、その前にイイズナの見分け方をお伝えします。

オコジョとイイズナの違い ~イイズナの見分け方~

よくイイズナとオコジョは似ている、と囁かれます。たしかに両者を並べて見てみると、どちらがどちらか、ひと目ではわかりづらくあります。

イイズナとオコジョはどちらもイタチの仲間であることから容姿が類似していますが、それぞれが持つ染色体の数や構成は大きく異なっています。

まずはからだのサイズ。オコジョの体長が14〜33センチなのに対し、イイズナは14〜26センチとひと回りほどちいさいです。さらに決定的な違いはしっぽです。

オコジョのしっぽの先が黒いのに対し、イイズナのしっぽは先端まで白色(夏毛時は茶褐色)をしています。ちなみにオコジョは夏毛でも冬毛でもしっぽの先端が黒いのでわかりやすいかと思います。

夏毛のオコジョさん

北海道でイイズナに会えるスポット

野生のイイズナは警戒心が強く、北海道の広大な自然のなかで野生のイイズナに出会える確率はかなり低いとされています。そんな希少なイイズナですが、これまでの目撃情報をもとにいくつかポイントをご紹介していきたいと思います。運が良ければイイズナに会うことができるかもしれません。

札幌近郊

円山公園、藻岩山、大倉山ジャンプ競技場周辺などの緑が多くのこされている場所では、イイズナに遭遇する確率が高いとされています。

道央・道南

各地の自然公園や緑地などでイイズナの姿が確認されています。イイズナは、ネズミなどの主にげっ歯類を捕食しているため、河川敷や湿地など、水辺近くで確認されることも多いのです。このほかにも農地や人通りの少ない山地などでもイイズナに会える可能性があります。

観察のポイント

イイズナに出会うためにつぎのポイントを意識するとよいでしょう。

  • 時間は早朝や夕暮れがベスト
    イイズナは夜行性です。早朝や夕暮れ時が観察のチャンスです。
  • できるだけ音を立てない
    イイズナは非常に警戒心が強い動物です。そのため、もし見つけても大声でさけんだりすると驚いて逃げてしまう可能性があります。できるだけしずかに観察することを心がけましょう。
  • 足跡を頼りにする
    イイズナの足跡やフンを目印にして探すのもひとつの手です。

言うまでもなくイイズナは野生の生きものです。むやみに近づいて驚かせたりしないよう細心の注意を払いながらしずかに観察するようにしましょう。また、イイズナ見たさに「立ち入り禁止区域に入ってしまっていた」ということがないよう、あらかじめ区域を調べておくと安心です。

イイズナがいる動物園

世界最小、希少な動物イイズナに会ってみたくなってきませんか。どうしてもイイズナに会いたい。そんな方のために北海道でイイズナに会うことができる動物園をご紹介しようと思ったのですが、非常に残念なことに2023年1月31日に「おびひろ動物園」で飼育されていたイイズナの「雪月(ゆづき)」ちゃんが天国へ旅立ってしまいました。

雪月ちゃんは国内で唯一の展示個体でした。
野生化でのイイズナの寿命が1,2年といわれているのに対し、雪月ちゃんは3歳まで生きてくれたとのこと。死因は特定できていないということでしたが、まちがいなく雪月ちゃんは一般的なイイズナより長生きをしてくれました。

イイズナの展示は終了となってしまいましたが、雪月ちゃんがさいごまで幸せに暮らせていたことを思うと、心があたたかくなります。

さいごに

世界最小の肉食獣イイズナ、いかがでしたしょうか?
わずか100グラムというちいさな身で勇敢に獲物に向かっていく姿は、過酷な自然を生き抜く強さそのもの。まるで私たちに生きる力と勇気を与えてくれているように感じました。

北海道にはイイズナを含むイタチの仲間がたくさん暮らしています。この記事を通してひと目でいいからイイズナに会ってみたい、北海道に行ってみたい、と思っていただけましたら幸いです。

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