流氷の天使といわれているクリオネ・・・その正体は悪魔だった?

オホーツク海といえば北海道。約153万平方キロメートルもの面積を誇るその海には流氷の天使が暮らしています。天使の名前は、クリオネ。透きとおった翼足(よくそく)をひろげて海中をはばたくように泳ぐその姿はまさに天使そのものです。

今回は、そんな流氷の天使であるクリオネについてお伝えしていきます。クリオネとはいったい何者なのか。その生態や特徴、ちょっと意外なクリオネの捕食についてもみていきます。

目次

流氷の天使 クリオネ

クリオネとはいったい何者なのでしょうか。ここでは、クリオネの基本情報をご紹介していきます。

クリオネの分布

クリオネは北極圏をかこんでいる太平洋、北太平洋、南極圏などの寒流地に分布している生きものです。日本では、1月下旬ごろからオホーツク海にてその姿を確認することができます。クリオネは流氷と共に北極圏から北海道の海へとやってきます。

体長

オホーツク海で見られるクリオネの体長は約13センチほどです。ちなみに、北極圏に分布しているクリオネは割と大型の個体が多く、最大で約8センチにものぼります。

寿命

クリオネの寿命は13年程度といわれていますが、未だ不明とされています。また、クリオネは絶食をした状態でも1年は生きるとされています。

クリオネが流氷の天使とよばれている由来

クリオネは、冷たい海の中で翼足(よくそく)といった羽根のような部分をゆっくり、上品に動かして海中を泳ぎます。この姿からクリオネは「流氷の天使」と呼ばれています。

クリオネの学名

クリオネは和名で「ハダカカメガイ」と呼ばれています。では、学名ではなんというのか。じつはクリオネの学名は「クリオネリマキナ」といってギリシャ神話の女神、ミューズのひとりである「クレイオー」に由来しています。そして、リマイキは「ナメクジ」を意味します。これらを略すとナメクジのような海の女神となります。

謎めくクリオネの生態

クリオネの生態は今でも解明されることはなく、謎に包まれている部分が多いです。本章では現在わかっているクリオネの生態についてお伝えしていきます。

貝の仲間なのに貝殻をもたない

クリオネは巻き貝の仲間です。それにもかかわらず、成体のクリオネは貝殻をもっていません。クリオネは外殻をもたないプランクトンの一種であり、腹足網で殻をもっていないという点においては陸上に生息しているナメクジと一緒なのです。

どうしてクリオネのからだは透明なのか

クリオネのからだは以下の画像でもわかるように内臓がはっきり目視できるほどに透けています。では、いったいどうしてクリオネのからだはこのように透明なのでしょうか。

クリオネのからだが透明な理由。それは、クリオネが体内にエネルギーを温存しているためです。冷たい海で生き延びていくためにクリオネは良質なタンパク質をからだに貯めておく必要があるのです。
タンパク質というのはその純度が高ければ高いほど、透明度を増します。そういうわけでクリオネのからだはご覧のとおり透明なのです。

クリオネはエラ呼吸をしない

クリオネはエラをもっていない生きものです。エラをもっていないということは当然、エラ呼吸をおこなうことができません。それではいったいクリオネはどのようにして呼吸をおこなっているのでしょう。

じつは、クリオネは皮膚で呼吸をおこなっています。海中の酸素を皮膚を通して体内に取り込んでいるのですね。

オスでもあってメスでもある

クリオネはいわゆる雌雄同体といって、カタツムリやミミズのように卵巣と精巣を同一の個体にもっている生きものです。つまりクリオネはオスでもあって、同時にメスでもあるわけです。

豹変するクリオネ!天使から悪魔に一変?

突然ですが、みなさまはクリオネが捕食をするところを見たことがありますでしょうか?流氷の天使と呼ばれているクリオネですが、その捕食シーンはすこし残酷です。
幼体時のクリオネは主に植物プランクトンを食べて生活しています。しかし、成体になると肉食となり、ミジンウキマイマイを食べることが知られています。
ミジンウキマイマイは学名で「リマキナヘルシナ」といって巻貝の一種です。

クリオネは、頭部にある触手を使ってこのミジンウキマイマイを捕食します。ミジンウキマイマイを発見したクリオネは、まず、その頭部を左右にパカッと割り、バッカルコーンと呼ばれている6本の触手をのばします。
クリオネはそれらの触手でミジンウキマイマイをつかまえ、さらに、ミジンウキマイマイの軟体部に触手を突き刺します。そうしてミジンウキマイマイの養分をゆっくり時間をかけて吸収していくのです。

時間にしておおよそ30分くらいでしょうか。ミジンウキマイマイの養分をすべて抜き取ってしまうと、残されるのはミジンウキマイマイの殻だけとなってしまいます。
こうしたクリオネの捕食シーンは「天使」のイメージとは程遠く、その姿はどちらかというとわたし達に「悪魔」を彷彿させます。

水族館だけではものたりない!野生のクリオネを間近で観察!

しばしば水族館でも展示されることがあるクリオネですが、じつは、野生のクリオネを観察することも可能です。この章では北海道にてクリオネを観察するための方法についてお伝えしていきます。

北海道でクリオネを見るならこれは外せない!

北海道で野生のクリオネを見るには一般的に、ダイビング流氷ウォーキングを含むツアーに参加するなどの方法があります。なかでもダイビングはとくにおすすめです。

運がよければ至近距離でクリオネを観察することができますし、ドライスーツを着て海に潜ることでその大自然を直接、肌で感じることができます。とはいえ、冷たい海に潜るというのはなかなか勇気がいるものです。そこで、だれでも気軽にたのしむことができるのが流氷ウオーキングなどのツアーです。

ツアーの多くはダイビングと同様にドライスーツを着て流氷の上を探索します。専用のゴーグルなどで海中の様子を窺うことが可能ですので、クリオネを見つけて観察することもできます。時期によってはかなりの確率でクリオネと出会うことができます。
また、北海道ではダイビング、ツアーのほかにも間近でクリオネを観察できる施設があります。その代表とされているのが『オホーツク流氷館』です。

流氷館ではクリオネをはじめとするオホーツク海の生きものが展示されています。じっくり観察したいという方におすすめの施設です。

ところでクリオネを飼育することは可能なのか

人びとを魅了してやまないクリオネですが、はたして、一般家庭でクリオネを飼育することは可能なのでしょうか?

その答えは「YES」。

なんとクリオネは飼育することができるのです。下記にクリオネの飼育方法について詳しく解説していきます。

クリオネを飼育するには?

おそらくクリオネを飼ったことがあるひとは少ないと思います。しかし、クリオネの飼育は意外にも簡単です。用意するものといえば「海水」と「瓶」くらいでしょうか。適当なサイズの瓶(フタ付きのもの)にクリオネを2、3匹いれて飼育します。

クリオネの餌はミジンウキマイマイという巻貝の一種です。しかし、ミジンウキマイマイは入手することがむずかしく、もし、クリオネを飼育する場合は餌を与えることはできないと考えたほうがいいでしょう。
クリオネは一般的には瓶などにいれて販売されています。相場はおおよそ1000円から3000円のあいだで、通販でも入手することが可能です。

家庭でクリオネを飼う場合には、基本的に冷蔵庫での飼育となります。鑑賞する場合にかぎって冷蔵庫から取り出すようにし、またすぐに冷蔵庫に戻すようにしてください。
また、海水にはプランクトンが含まれています。ですので、むやみに海水をとり換えるのは避けましょう。2週間から3週間に一度の水換えが適切だとされています。海水が濁ってきたら換えるようにします。

食用クリオネ そのお味は?

こちらのタイトルを目にしたみなさまはきっと「え? クリオネって食べられるの?」との疑問を抱かれたかと思います。正直いって筆者もクリオネが食べれるということを今の今まで知りませんでした。そうです。じつはクリオネは食べられるらしいのです。
クリオネの食べかたはさまざまあるようで、その調理法は、インターネット上にも記載されています。

筆者はいまだにクリオネを入手、口にしていませんが、どうやらクリオネはそうとう苦味が強いようです。

さいごに

流氷の天使と呼ばれているクリオネですが、その捕食シーンには圧倒させられてしまいました。本文にてそれらクリオネの姿を『悪魔的』と称しましたが、しかし、考えてみればどの動物にしたって(とくに野生では)その捕食シーンは悪魔的に映されてしまうものなのかもしれません。

悪魔とは「残酷」の例えでもありますが、そうして考えてみると人間だって例外ではありません。とくに貪欲に食べものをむさぼっているときなどは悪魔にみえなくもない。

そんなわけで・・・天使としてのクリオネと、悪魔的なクリオネと、そのギャップに筆者は多少なりとも興奮、ひいては感動しております。
ただ可愛いだけじゃないクリオネの姿をぜひ、北海道の海にて観察してみてください。

※画像はイメージです。

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