今回は、北海道の石狩川で泳いでいたとされる「チョウザメ」についてご紹介します。
突然ですが、あなたはチョウザメが「サメ」の仲間でないことをご存知でしょうか?じつはチョウザメは名前に「サメ」がついていますが硬骨魚類の仲間で淡水魚なのです。
それでは、チョウザメの生態や特徴、過去から現在に至るまでのチョウザメと北海道との関係性についてみていきましょう。
チョウザメの正体
こちらではチョウザメの生態や特徴についてご紹介します。
冒頭でも述べましたとおりチョウザメは「サメ」ではなく、チョウザメ目に分類される硬骨魚類の仲間です。これは古代魚などの分類群の1つです。
では、なぜチョウザメと呼ばれているのでしょうか?
名前の由来はこちら。
- チョウザメの体表にある鱗のかたちが「蝶(チョウ)」に似ているため
- 全体で見た場合、その姿恰好が海にいる「鮫(サメ)」を思わせるため
これらをあわせて「チョウザメ」となったそうです。
サメと聞くとなんだか怖いイメージがありますよね。しかし、チョウザメがひとを襲うことはありません。まれにエサとまちがえて手などをパクっとすることはありますがご安心ください。チョウザメには歯が生えていません。ですので、たとえ噛まれてしまっても痛みはありません。
ほんとうなの?と思う方は、千歳市にある『千歳水族館』でチョウザメとじかに触れあうことができる体験エリアがありますのでお試しください。
チョウザメの特徴
チョウザメの特徴の1つとしてあげられるのが体長です。なんと、大型のチョウザメの体長は約8メートルにも及び、体重は2トンと想像以上に重たい印象を受けます。
さらに、チョウザメ。
長寿なことでも有名で、その最高年齢は153歳といわれています。
また、チョウザメの卵はキャビアとして流通しています。ご存知のとおり、キャビアは世界三大珍味の1つとされている貴重な食べものです。卵のほかにもチョウザメの皮にはコラーゲンがたっぷり含まれており人気です。
石狩川にもチョウザメがいた!
チョウザメの分布は北半球に限られ、とくに北アメリカやロシアの沿岸・河川・湖沼で多くみられる傾向にあります。日本でも北海道の「石狩川」「天塩川」「十勝川」「釧路川」などでチョウザメの遡上が確認されていました。
かつては「ダウリア・チョウザメ」「ミカド・チョウザメ」といった2種のチョウザメが北海道の河川に生息していました。しかし、残念ながら現在は絶滅したとされています(環境省、北海道レッドリストには絶滅種として記載)。
どうして、チョウザメは絶滅してしまったのでしょうか。
昔はもっとチョウザメが・・・
北海道の河川でよく見かけられていたチョウザメたち。しかし、彼らは大正時代から昭和初期にかけて急激に数を減らしてしまいます。その原因はあきらかにされていませんが「河畔などの減少や河川環境の悪化が要因ではないか」といわれています。
また、「ダウリア・チョウザメ」や「ミカド・チョウザメ」が絶滅した原因としてあげられるのが「河川改修などの工事」によるものです。改修工事により産卵場所を失ったことでチョウザメは減少し、絶滅に追いやられたと考えられています。さらに、チョウザメの乱獲や密漁、環境破壊なども彼らを絶滅に追いこんだ要因としてあげられます。
チョウザメの今
チョウザメは世界的にも個体数が減少している生きもので、27種のうち23種が絶滅危惧種に指定されています。
北海道でチョウザメが絶滅したあと、外来種のチョウザメが入ってきて問題となりました。そして2023年。残念ながら、在来種であるチョウザメは絶滅してしまいました。
それを受けた北海道は現在、チョウザメの保護と繁殖のためにさまざまな取り組みをおこなっています。1970年代からチョウザメの養殖をはじめた北海道は日本一の養殖量を誇っており、キャビアの販売にも力をいれています。
また、チョウザメの個体数を増やすために毎年、数万匹のチョウザメを河川へ放流したり、チョウザメが住みやすいよう水質を改善、漁業規制を設けるといった活動にも取り組んでいます。
とくに北海道、美深町ではこうしたチョウザメへの保護活動が積極的におこなわれており、森林公園びふかアイランド敷地内に日本初の「チョウザメ館」を設立しました(ちなみにこちらは無料でチョウザメを鑑賞することができます)。
さらに「びふか温泉」では養殖したキャビアを堪能できるのだとか?
チョウザメは神様?
ここではアイヌのひとたちとチョウザメとの関係を見ていきたいと思います。
チョウザメはアイヌ語で「ユペ」と呼ばれています。北海道東部ではオンネチェプ(=老大魚)やカムイチェプ(神の魚)またはビシュルカムイ(=鋲をもつ神)といわれています。
また、北海道で一番大きいとされる「石狩川」の中流域ではチョウザメに関する地名(※)や、生息記録が残されています。さらに石狩市にある寺や神社には、川の守り神としてチョウザメが祭られています。チョウザメを祭ったのは和人と推測されていますが、石狩川の河口に住んでいた人たち(アイヌのひとを含め)はチョウザメとの深い関わりがあったと考えられています。
石狩の地域では、チョウザメを捕食したり、食用にしたといった記録は残されていません。その点からもチョウザメが神格化されていたことが窺えます。
石狩平野中央に位置する江別市。「江別」という地名はアイヌ語の「ユペ・オッ(=チョウザメがたくさんいる」の意から由来しているという説があります。
(『ゴールデンカムイ』第237話参考)
過去から現在へ
いかがでしたでしょうか?
今回は北海道の河川に生息していたチョウザメについてお話させていただきました。
北海道とチョウザメは過去から現在にいたるまで非常に深い関係があったのですね。チョウザメの卵は昔からキャビアとして重宝されていたわけですが、どうでしょう?
皆さまの中にもキャビアは鮫の卵が原料だと勘ちがいされていた方も多いのではないでしょうか。
在来種であるチョウザメが絶滅してしまった今、なんとかチョウザメを養殖させようと奮闘されている道民の方がいらっしゃることに心を動かされると共に、チョウザメへの関心がグッと高まりました。
「昔は居たけど、今は見ない」
なんて切ない言葉なのでしょう……。
このようなセリフを口にしなくて済むよう、日常から野生生物を意識して行動していきたいものですね。
本日もさいごまでおつきあいくださいまして誠にありがとうございます。
※画像はイメージです。
\ コメントくださ〜い /