約40%の賭け、天国に一番近いカフェ「雲海」の奇跡

雲海(うんかい)は文字通り、雲が海のように広がる現象。
飛行機の窓からなら見たことがある人も多いでしょう。しかし、自分の足で立った場所、しかも美味しいコーヒーを飲みながらと話は別です。

占冠村(しむかっぷむら)にある「星野リゾート トマム」の雲海テラス。
SNSやポスターで見かけるあの景色は、本当に実在するのか?
それとも選ばれし勇者しか見られないのか?
眠い目をこすりながら挑んだ、早朝4時のゴンドラとの戦い、目の前に広がった光景、そんたく無しでお伝えします。

目次

午前3時半起き、夏なのにダウンジャケット必須の過酷

トマムの雲海テラスを楽しむための最大のハードル、それは「朝」。
雲海が発生しやすいのは早朝の時間帯、そのため、時期によりますがゴンドラは朝の5時前後から動き出します。
当然、ホテルを出るのはその前。まだ空が真っ暗な中、のそのそと起き出すわけです。

ここで道外の方がやりがちなミスが「服装」です。
「夏休みだし、北海道といえど半袖にパーカーくらいでいいしょ?」と思っていると、痛い目を見ます。
ここは北国北海道、標高1,000mを超す山頂付近の早朝、気温は一桁になることもザラです。

8月にも関わらず、周りはライトダウンやフリースを着込んでいる人が多数。この「寒さ対策」こそが、雲海待ちの時間を優雅に過ごせるか、震えて過ごすかの分かれ道になります。

ゴンドラを抜けた瞬間の「勝利確信」

ゴンドラ乗り場に行くと、すでに長蛇の列。みんな眠そうな顔をしていますが、どこか「今日はいけるのか?」という面持ちで緊張感が漂っています。

約13分間の空中散歩、最初は周囲の木々が見えているだけですが、ある高さを超えた瞬間、世界が一変しました。
今まで自分たちがいた場所が、真っ白な霧の中に包まれます。
「あれ? これ天気悪いだけじゃ?」と不安になった次の瞬間、ゴンドラが霧(雲)の層を突き抜け、眩しい朝日の世界へ飛び出しました。

「抜けた!!」

同乗者と顔を見合わせた瞬間。
足元には、さっきまで自分たちを包んでいた霧が、分厚い絨毯となって広がっています。
この雲の上に出る瞬間の高揚感は、何度味わっても鳥肌が立つでしょう。

太平洋産? トマム産? 雲海にも種類がある

テラスに到着すると、そこはまさに「天空」。
眼下に広がるのは、どこまでも続く白い海。遠くの山々の山頂だけが、まるで海に浮かぶ島のように頭を出しています。

実は雲海にはいくつか種類があるのをご存知でしょうか。
この日私が見たのは、十勝方面から滝のように流れ込んでくる「太平洋産雲海」と呼ばれるダイナミックなタイプ。
雲が生き物のように山を越え、流れ込んでくる様子は圧巻の一言、静止画ではなく、動画を撮りたくなる動きです。

他にも、放射冷却によってトマム盆地に発生する穏やかな「トマム産雲海」や、天気が悪い時に雲の切れ間から覗く「悪天候型雲海」などがあります。
スタッフの方が解説してくれるので、今、自分はどんな気象現象の中にいるのかを知ることができるのも、ここの魅力です。

映えだけじゃない、高所恐怖症泣かせのアクティビティ

雲海テラスというと、デッキから眺めるイメージが強いですが、近年は進化が止まりません。
私が体験して足がすくんだのが「Cloud Walk(クラウドウォーク)」です。
雲の形をした吊り橋構造の通路なのですが、足元から地面までの距離感があり、まるで雲の上を空中散歩しているような感覚になります。

さらに面白いのが「Cloud Bar(クラウドバー)」。
なんと、地上3メートルの高さにある椅子に座って景色を眺めるスポットです。ハシゴを登って座るのですが、目の前を遮るものが何もなく、雲海と自分だけの世界に入り込めます。

高所恐怖症の友人は「絶景だけど、手汗が止まらない」と笑っていました。このスリルもまた、トマムならではのスパイスです。

「雲海ソーダ」で乾杯する非日常


絶景のお供には、「てんぼうカフェ」のメニューが欠かせません。
定番の「雲海コーヒー」も美味しいですが、おすすめは「雲海ソーダ」。青いソーダの上に、雲海に見立てた綿あめが乗っています。

「観光地価格の映えドリンクでしょ?」と侮るなかれ。この極寒(体感温度)の中で、キンと冷えたソーダを飲み、甘い綿あめを溶かしながら朝日を浴びる。この「状況」が最高の調味料となり、不思議と体に染み渡るのです。

ここで少しトリビアを。この雲海テラス、元々はゴンドラのメンテナンスをするスタッフだけが見ていた景色だったそうです。
「この素晴らしい景色を、作業員だけで独占するのはもったいない。お客さんにも見せたい」
そんなスタッフの熱い想いから、夏場のゴンドラ運行が始まり、今のテラスへと発展していきました。
今では北海道を代表する観光地ですが、始まりは現場の方々の「おすそ分け精神」だったと思うと、なんだか温かい気持ちになりますね。

雲海が見られる確率

正直に言いますと、雲海が見られる確率はシーズン通して約40%と言われています。
行けば必ず見られるわけではありません。私も過去に一度、真っ白な霧の中で「心の目で雲海を見る」という敗北を経験しています。
しかし、そのギャンブル性があるからこそ、見られた時の感動は人生の宝物になります。

朝日が昇り、雲が金色に染まり、それが刻一刻と形を変えて流れていく様を見ていると、日々の悩みなんて本当にちっぽけなものに思えてきます。

早起きの辛さも、寒さも、すべてが報われる瞬間がそこにはあります。
ぜひ、防寒対策を万全にして、この「勝率40%の賭け」に挑戦してみてください。負けても山の空気は美味しいですが、勝った時の景色は、一生忘れられないものになるはずです。

※画像はイメージです。

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